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檻囚のTnTのネタバレレビュー・内容・結末

檻囚(1962年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

 寺山初の映像作品。粗々しいし、カットごとの繋がりも殆どない。状況演劇を記録した風で、ディープウェブにでもありそうな代物。世界観自体は確立されているのでどんなに点でバラバラでも、あるアングラ世界のファウンドフッテージとしての役目を担ってるように思える。

 窃視する目(寺山は一度覗きで捕まっている)。覗き見られた世界は檻の中のようであると言いたいのだろうか。演劇的な自由な視界は無く、フレーム内というのぞき窓から見るしかない。途中の盆踊り婆さんの永遠に感じる時間には確かに”檻”の役割を認識した笑。観客は向こうの世界が囚われの世界と思いつつ、実は自分たちも拘束されていることに気がつく。にしても、覗く先のイビツな世界はもはや黒澤「どですかでん」ではないか!(黒澤もアングラやりたかったのかもなー)。

 掛け時計、靴、男の肉体、屈伸。以降も頻出するモチーフの数々。今作にはないが、ビクターの犬の置物もよく出てくる。これらは寺山の作家性でもあるが、時代の象徴でもあるように思える。今、身の回りを見て同時代的と思われる共通認識を持つモチーフがあるだろうか。スマホぐらいな気がして、寂しい。屈伸の昭和臭よ!

 J・A・シーザーのあのおんなじフレーズを反復していくミニマルさが、迷宮を彷徨うかのような不安を煽る。いつ終わるかを音楽は明示してくれないのだ。
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