半兵衛

暴行切り裂きジャックの半兵衛のレビュー・感想・評価

暴行切り裂きジャック(1976年製作の映画)
3.0
殺人の快楽に取りつかれた男女が次々と女性を殺害していくというジャーロみたいな内容なのに、それが今一つ興奮しないのは殺人場面がアクション映画の動作と撮影方法だからか。ナイフの丁寧なえぐり方で観客の嫌悪感を誘う演出は嫌いじゃないけれど(でもそれケーキ用のナイフなんだよね)。

かつてリリー・フランキーが自著『日本のみなさんさようなら』で本作を取り上げておりこの作品の本質を聖書を引用して鋭く突いた名評論を書いているので未読の人は是非読んでほしいが、20年ぶりに改めて見直すと確かにその文章の通りの内容であった(長谷部安春監督というより脚本を手掛けた桂千穂の影響が大きいのだろうけれど)。だとするとラストカットは異様な性愛の果てにプレッシャーのようにまとわりついていた女から脱却して自立をなし得た者の姿をあらわしているのか。

豪華な女優陣の見事な殺されようも見所、特に主人公たちが連続殺人に目覚める切っ掛けを作る山科ゆりのクレイジーっぷりは後年の佐藤寿保作品のヒロインを予見しているようで必見。
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