イチロヲ

鍵のイチロヲのレビュー・感想・評価

(1974年製作の映画)
3.5
性生活に不満を抱いている夫(観世栄夫)が、盗み読まれることを前提とした日記をしたためることにより、妻(荒砂ゆき)の娼婦性を覚醒させようとする。谷崎潤一郎の同名小説を映像化している、日活ロマンポルノ。筆者は原作を読了済み。

原作は夫婦の日記の内容を交互に開示していく語り口だが、本作では夫の日記をメインに据えて、原作の各場面を時系列順に再構成したような作風になっている。また、原作の最終章における、唐突な妻の独白も、腑に落ちるように脚色されている。

主人公の夫は、古式の「貞淑な夫人像」に疑念を抱いている人物。一方の妻は「貞淑を演じることが美徳」と思い込んでいる人物。そこに、青年(河原崎建三)と主人公夫婦の娘(渡辺とく子)が干渉してきて、性衝動合戦が繰り広げられる。

観念的なサイケデリック表現が面白いけれども、妻が娼婦っぽい雰囲気を最初からビンビンに発し過ぎているところが難点として挙げられる。「母型の女性像」から「娼婦型の女性像」へと変身していく様が、ほとんど伝わってこないため、エロスが足りない。
イチロヲ

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