みほみほ

最後の日々 生存者が語るホロコーストのみほみほのレビュー・感想・評価

4.0
🇭🇺2023年277本目🇩🇪💎(字幕)

様々な角度からの証言。まさかアウシュヴィッツでヨーゼフ・メンゲレと共に医師をしていた人まで出てくるとは思わなかったし、アウシュヴィッツにいた女性と引き合せるのも大胆な試みで驚いた。

この先生は唯一無罪になったみたいだけど、ホロコースト生存者の女性と対面したシーンで歯切れの悪さを感じたので、実験を利用しながら助けた命があってもその裏で言えない事もたくさんあるんだろうな…

勝手に近年の作品かと思っていたけど、25年前との事で衝撃。今だと生存者も少なくなってきていると思うし、生存者のみならず米軍兵士からアウシュヴィッツの医師、そして遺体の焼却を任されていた人など、登場する人々が幅広くかなり貴重なドキュメンタリーになっている。

本作でホロコーストの全容を知れるわけではないけど、少なくとも生の声をじっくり聞けたことで、普通の幸せを突然奪われたユダヤ人達の苦しみが伝わってくるし、追い出された家を見て泣き崩れる女性を見るのはとても辛かった。

ダイヤモンドをなんとか死守した女性のお話は映画みたいにスリリングで、あの環境下でよく守り続けたなと驚いてしまった。代々そのダイヤモンドを受け継ぐことで、この女性の想いが子から子へと伝わっていることを願う。

ユダヤ人差別はドイツだけに限った話ではないのは知ってたけど、ハンガリーでもナチスの手が伸び始めると、昨日まで家族ぐるみの付き合いをしてた親友が突然ユダヤ人だからと憎しみをぶつけてくるっていうのが衝撃的。これって味方したら殺されることへの恐怖からなのか、単純に憎しみなのかは謎のまま…。

ハンガリーのユダヤ人達は、遠くの国で起きてる事だと当初は楽観視してたようだけど、敗戦色が強くなっても軍備の強化よりホロコーストを優先したナチスの執念と惨さには、何作彼らの悪行を観ていても毎度打ちのめされる。

神への信仰が口にされていたけど、ユダヤ人との軋轢を生んだ要素のひとつが宗教とか神だと思うと複雑な気持ちになる。昔から現代まで永遠と繰り返されて状況は良くなってはいても、まだまだ終わりのない課題だけど、自分の身近で恐ろしい事が起きたりしたら、その時できる最善を選択できる人間でありたい。
みほみほ

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