だた

ブロンコ・ブルフロッグのだたのレビュー・感想・評価

ブロンコ・ブルフロッグ(1969年製作の映画)
4.0
「中原昌也の白紙委任状」22.12.15
トーク: 遠山純生(映画評論家)+中原昌也

どんな映画でもそうだが、この映画も例に漏れず自動車で逃避行してからが面白い。漠然とした逃亡計画につきまとう、釈然としない計画と突飛さ。彼らの下手な芝居が画面上では確かに素晴らしいのは、逃避行を繰り広げる物語上の「彼ら」の精神と即興演技を促される実際の彼らの身体が心身の並行を保つ、ドキュメンタリー性に他ならないと思われる。 

「これをしてはいけない」と束縛・禁止するのでは無く、タブー行為を選択する可能性自体を演者の意識から除去することが、却って可能性と不安を心身に担保し、演技を自由にさせるのではないだろうか。もちろん、台本を読まない演者たちという本作の特殊な背景上、それは不可抗力な演出意識にもなると思うが。トークショーでせっかく遠山がミルズの監督としての特殊な出自(役者になるなら役者に演技をつけなさいと助言された)に触れたのだから、その路線でしっかり話の出来る人同士のノリを聞きたかった。中原は番組の選定人としては一流なのだろうけど、流石にあの自分の出自の話は長すぎる。けっきょく山田洋次嫌いなの言いたかっただけなのか。

精彩を欠いた暴力描写ではあるものの、カット頭でガラスが割れる、殴る、寝転ぶというジャンプカットめいた編集の暴力がアクションを代弁する洒落っ気。男が鍋に【たんまりと】コーンフレークとミルクを注ぎ、頬張る一連の流れを捉えた緩いカットの後に、煙草を吸う女を持っていく事で安易な対比かと思わせつつ、パンによって二人は見つめあっていた!という終盤の2カットが地味に印象に残った。あと豚小屋と形容されるジョーの寝床が、彼が勢いよく寝転ぶ一瞬のではカットでしか映らないとことか、目線の高さがまるで一致してない切り返しみたいな一見すると即興ゆえのミスっぽい部分がなぜか魅力的。所々雑な日本語訳(親子喧嘩で子供が「死ね」っていうところ!)と余りにも無慈悲なバイクのペチャンコシーンも超ウケる。
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