なおぶみ

太秦ヤコペッティのなおぶみのレビュー・感想・評価

太秦ヤコペッティ(2013年製作の映画)
4.8
これはすごく良かった。ここ1年ぐらいで観たインディーズ系映画の中では一番のヒット。

冒頭の金属音から始まる工場場面がカッコいい。
雰囲気から画面の色調からやりとりまで、好み。
鉄男とか町田康とか、あの辺の匂いを感じる。

グロいんだけど、そこまで下品にも汚くも感じなかった。ただ奥さんを食べるシーンだけはほんとに見てられなかった。
俺は好きな人には食べられてもいいけど、好きな人を食べるという発想がなかったからそれも含めてなんとなく考えるところもあった場面。

それと、俺は不真面目だけど変にガチガチなとこあるから、主人公が蟹盗んだり、通行人とスーツ交換したりとか、自由な感じみるとそういう生き方もいいのかと、ちょっと楽になれる。

俺の中では、前半中盤と、後半にかけてベクトルが違って見えた。
前半中盤は、家族のことを思うも、ありすぎる行動力となさすぎる責任感から、まるでシュールコメディ映画の登場人物のような主人公が取り返しのつかない世界に足を踏み入れていくヒリヒリ感と、それに触発される警官という、二人の男の相互関係を描いているのかと思った。

でもこれは、最初から最後まで、家族の話だったんだね。
妻が殺人衝動に身を任せていく中盤から後半まで、家族に焦点が強く当たっていく。

あの、家を作るっていいなぁ、一緒におにぎりを食べるのも、同じ夢を見て、一緒に頑張っていくのも、家族。
あの家族の空間があって、幸せも穏やかさもそこにはあって。
あの一家を思い出すと、なんだか懐かしい気分になる。

家を作っている空き地の裏っ側の林とか、団地とか好きな感じ。

あと制作段階でこの企画を通した手腕とかもすごい。脚本段階だと伝わらなさそうなところもたくさんあって、実際そうだったらしいけど、監督は絵コンテ添えてこうなります!って説得したらしい。

二回(三回?)観たっていう友人が、奥さんが殺しに取り憑かれたり蛹が蝶になったのに感動したりしたのは、新しい子供が欲しかったり、命に関心があったからだって言っていて、ああ、そうなんだ、するどいなぁと思った。

もっかい観たいね。
なおぶみ

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