MasaichiYaguchi

人類資金のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

人類資金(2013年製作の映画)
3.1
この作品は、敗戦直前に旧日本軍によって隠匿された時価10兆円の金塊などの財宝、通称「M資金」を題材としているが、この秘密資金の争奪戦やそれに纏わるミステリーを描いた映画ではない。
この10兆円の「M資金」を元に、資本主義社会における「世界のルール」と戦うドラマをスリリングに描いている。
今の世の中は、日本だけでなく世界的に「格差社会」が広がっていると思う。
一部の富める者達を頂点に、底辺の部分を発展途上国の人々や貧困層が占めているという完全な「ピラミッド型」世界だと思う。
「アベノミクス」で景気が上向き、東京オリンピック開催によって好況感が膨らんだが、ご存知のようにコロナ禍によって不況の真っ只中。
少し前までは国債の乱発だ、日本人一人当たりの借金は何百万だと騒がれていた状況は、今はどうなっているのだろうか?
この作品は、そのような金融資本主義社会の「限界」に警鐘を鳴らし、従来の「世界のルール」を変え、新たな資本主義の在り方を提案しようとしている。
この「ルール」を変更しようと奔走する人々、主人公である「M資金詐欺師」の真舟雄一、「財団」代表と名乗る「M」、その腹心の石優樹、そして初めは彼らを追う立場だった高遠美由紀、一方それを阻止しようとする強大な力の存在もあり、暗殺者をはじめとして、ありとあらゆる方法で彼らの前に立ちはだかっていく。
果たして彼らは「ルール」を変えて、世界をも変えることが出来るのか?
「エコノミック・サスペンス超大作」と銘打たれた本作は、日本だけでなく、ロシアのハバロフスク、タイのカンチャナブリ、そしてニューヨークとワールドワイドに展開し、特にニューヨークでは、邦画史上初の国連ロケを敢行している。
福井晴敏さんの原作の映画は、よく銃撃戦や派手な爆破シーンがあるが、本作ではそういうシーンが登場しないが、最後まで緊張の糸が途切れることなくスリリングに骨太なドラマが展開する。
個人的には「大きなこと」は出来ないが、お金の「有効的な使い方」は心掛けたいと思った。