蟬丸

わたしはロランスの蟬丸のネタバレレビュー・内容・結末

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

 人のどういうところを愛しているのか、と対象を思い浮かべて自問自答してみると解答は人によっていろいろ出てくるだろう。それは対象の性質や行動を愛しているわけではなく、愛している対象に属するからこそ愛しているといえるのだろうと思う。(いや対象自体とその性質等は絵画の細部と全体のように互いが互いを規定しているのだけど。)しかし、じゃあそれが人を愛しているということなのかというとそうとも言い切れない。本当に人を愛するということはどういうことなのか。セクシュアリティはどのようにそこに入り込むのか。むしろセクシュアリティに人を愛することが入り込むのか。

 フレッドが明確に「男が欲しい」という答えを押し通して表明する潔さがあってよかったと思う。なあなあで一緒にいたりすること(ロランスが途中女装をしていなかったりしたが)は悪あがきにしかならない。相手に合わせる、ということが居心地の良い不幸を生むことがある。自分にとって本当はなにがいいかと考えた方が良い方向に進むような気がする。

映画的にはあのまま2人でどこかへ行ってしまってくれても良かったが。全体的にセンスがいい。

 余談ですが、僕の友達(身体も性自認も男性で女性と付き合っている)が以前自分の性的指向がわからないと言っていて、その理由を聞いたら「次に好きになる人は男かもしれないから」と言っていて、観ながらそのことを思い出していました。
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