取り壊しを目前に、キリスト像を取り外され、電気も止められてしまった教会。
古くから司祭を務めてきた老人が、喪失感に生きる気力を失いかけていた夜。神不在の教会に、思いもよらぬ客人が訪れる。
全編セットでの撮影。まるで演劇を観ているかのような、ミニマムな世界。そのため場面は限られてくるのだが、それを感じさせない。室内にダンボールや布でテントを張った光景は、不思議と平原や空があるように見えてくる。光の使い方で、ここまで演出できるのかと感心。
『ユリシーズの瞳』でもまなざしという素敵な表現があった。似た言葉はあるけれど、感情や温度までそこに想像してしまう言葉はやっぱりまなざしだ。
そんなまなざしの会話が、本作では多く見受けられた。
本当に必要なものだけ持って、生きられないものだろうか。そんなことを思う、ある2日間の物語。