このレビューはネタバレを含みます
「善行は信仰に勝る」という台詞がとても良かった。カート・ヴォネガットの「愛は負けても親切は勝つ」に似た、確かな実感と説得力を伴う言葉。
教会とは本来どんな場所なのか、聖職者はどうあるべきか。躊躇なく移民たちを匿い、排斥主義者を一喝した神父さんは何ひとつ見失っていないように思えたけれど、それでも目に見えて弱っていったのは、自らの信仰が危機に瀕していたからなのか、聖職者としての今までの歩みが虚しいものだったと感じたからなのか。世俗に生きる者にはなかなか推し量りがたい心境である。
イタリア映画にはもっと難民や移民が登場してしかるべきなのではといつも思うが、この映画の月明かりに照らされるアフリカの人々の面差しはたいそう美しかった。特に弁護士さんが素敵。