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最愛の大地のnotitleのレビュー・感想・評価

最愛の大地(2011年製作の映画)
3.2
アンジェリーナ・ジョリーの監督デビュー作。アンジーの人道主義はすごくわかるのだが、それだけで映画作っちゃった感じだな。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を題材に映画を作るのは良い。民間人に視点を置くのも悪くない。こうしたナチス顔負けの虐殺がついこの前起きていて、今もあちこちで起きているということを否が応でも考えさせる、という点ではアンジーの狙いは正しいと思う。

しかし「実際にこういうことがあった」というリアリズムにばかり焦点を当て過ぎると「だったらニュース映画を見ていればいいじゃないか」という話になる。そういう意味では、本作も15分〜30分くらいのショートフィルムだったら傑作だったかもしれないが、2時間の長編にするには新人のアンジーには荷が重すぎたように感じられてならない。戦争で引き裂かれる2人のドラマだけで引っ張るには、脚本面でも演出面でも力量が足りなさすぎる。

映画全体のルックは、ポップな雰囲気を排したヨーロッパのインディペンデント映画という感じ。いかにもハリウッドスターのアンジェリーナ・ジョリーが監督したという映画、という風には見えない。題材が題材なだけに真面目に撮ろうとしたのだろう、というアンジーの姿勢は伝わってくる。
しかし、いくらヨーロッパ映画の真似をしてもアメリカ人のアンジーにヨーロッパ映画は作れない。であれば、アンジーも自身の表現能力をきちんと理解して、一番相応しいやり方で映画を作るべきなのだろう。

自分の描きたいことと自分の特性を見誤ってはいけない。これは全ての映画監督に言えることだ。
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