OASIS

最愛の大地のOASISのレビュー・感想・評価

最愛の大地(2011年製作の映画)
3.5
1992年に起こったボスニア紛争に巻き込まれてしまった一組の男女を描く映画。
監督はアンジェリーナ・ジョリー。

国連親善大使を務めて慈善活動にも熱心なアンジーの初監督作。
虐殺による悲劇も描きつつ「サラエボのロミオとジュリエット」と称される紛争によって引き裂かれた男女の恋愛模様がメインになっているが、アンジーの名前を出されて初めて気付くレベルで、お遊び一切無しなもの凄く硬派な作り。
性の掃け口とされたり、弾除けとして使われたり、ただただ男性によって道具として扱われる女性達を悲劇的に映していて描写にも容赦が無い。
「ダンス・ウィズ・ウィルブズ」や「ワンス・アンド・フォーエバー」の撮影監督ディーン・セムラーの力による所も大きいと思われる。

主人公は慰安婦として慰み者にされようとする中、将校となった元恋人と再会して匿われる事になるが、一度は逃亡した後にお抱え画家として戻ってくる事になる。
彼女を守ろうとする将校だが、父親からのプレッシャーを受けて自分の置かれた立場と愛の中で葛藤し、やがて彼女にもその牙を向ける。
人を撃つのに躊躇する気配が一切無いのには怖さを感じる。
基本的にこの作品の中で人が人を撃つ時は殆ど躊躇いが無くて、訓練された人間達が淡々と殺戮して行く機械染みた行動が恐怖を煽っていた。

彼女が息絶えた後でも語り継がれる様に、画家の設定をもっと活かしてくれれば良かったと思う。
人物画だけで無く、疲れきった人々で溢れる街中の風景を描くだとか。
収容所に居る多くの女性が道具としか描かれていなかった様に思えたし、子を無くして逃げ延びた姉についても丁寧に描いて欲しかった。
多民族国家ならではの紛争というものは宗教や種族の違いといった蟠りがある限り続いて行くだろうし、それを描き続ける意義はまだまだある。
OASIS

OASIS