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ジュリエット・ビノシュ in ラヴァーズ・ダイアリーのSPNminacoのレビュー・感想・評価

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2人のセックスワーカーのパートと、彼女たちにインタビュウするライター(ビノシュ)の1日を追うパート。若さと老い、貧困と恵まれた暮らし、性と死が対照に位置する前半はいささか陳腐だった。ところが、徐々にビノシュと少女たちの境目が混じり合い、やがて一体化していく後半は殆どスリラーみたいでちょっとゾクゾクする。閉まりにくい冷蔵庫、さっさと出て行く息子、ホタテ…とか結構比喩がわかりやすいしベートーベンはちょっとやりすぎだけど、まるでバラバラのページが一冊の本であるようなレイヤー構造。
まだ幼さが残る2人とビノシュは時に母娘のようだが、彼女たちの話が深まるにつれ、姉妹や友人、そして女性として一つの記号に。向き合って曖昧に溶けるシルエット、トイレや煙草の煙を吐く姿のシンクロ。家でビノシュが夫にある言葉を言われた瞬間、鏡に映リ込むショット。少女たちの世界とビノシュのいる世界は鏡の中で繋がっている。そして、客である男たちの世界も。
それぞれの世界を維持する嘘は手段であり、防御であり、足枷。「断ち切れない悪習」とは個人の選択よりもシステムだ。それ自体がある限り、抑圧と嘘から解放されない。女たちの見ている世界が男には見えていない。そんな映画。ELLE誌タイアップなのかしら。
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