Sari

ジュリエット・ビノシュ in ラヴァーズ・ダイアリーのSariのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

ELLEの雑誌ライターであるアン(ジュリエット・ビノシュ)は、売春を行っている2人の女子大生たちにインタビューする。若い女性の生き様に影響された中年女性が、自らの現在の生活の空虚さに気づいていくというもの。


アンはいわゆるフェミニストのライター。仕事は在宅で兼業主婦であるアンの日常と、アンが女子大生にインタビューしている映像と彼女たちが語るセックスの様子が交互に、手ブレのカメラでドキュメンタリーのように映し出されていく。

仕事をしながら行う家事の様子から不穏が漂う。料理中はキッチンが雑然とし、冷蔵庫が閉まらないことに苛立つアン。経済的に不自由のない生活だが、長男がアンに指摘する通り、実は仮面夫婦で家庭がうまくいっていない。両親の愛情不足からか、学校をサボりがちで非行に傾いている長男に対しては厳しく、幼い次男を溺愛するアン。

入院している高齢の父親をアンが見舞った際父は自らの死期について、しかし実際死ぬまでが長いと語る。夫の同僚を招いた夕食会。冷め切った夫との関係を打破すべく、珍しくドレスアップしたアンを夫は拒絶する。妄想から現実へ引き戻され、何事もなかったようにテーブルを囲む朝の家族の風景。残酷にも日常が続いていくということが死に例えられる諦観。クラシックが流れるエンドロールが静かな絶望を漂わせる。

40代後半というすっかり中年のビノシュだが、美しい。胸と背中が大胆に空いた黒のチューブドレスから、彼女のバストトップが一瞬露わになる。適度に脂肪が着いた丸みのある背中。エロティックな描写はあるが、意味不明の邦題から想像するほど安っぽくはない。静かで考察を要する映画。

2022/11/14 ムービープラス(録画)
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