マリオン

劇場版 ATARUのマリオンのレビュー・感想・評価

劇場版 ATARU(2013年製作の映画)
1.0
サヴァン症候群で天才的な推理能力を持つ青年が活躍するTVドラマの映画化。テレビドラマ未見だったので真面目なミステリーかと思いきや、シリアスな空気を読まないギャグと小ネタのオンパレードという寒くてダサいにも程がある映画だった。

映画のストーリーはかなり見ごたえがあるのではと期待させてくれる。数々の難事件を解決してきたアタルに立ちふさがる同じサヴァン症候群でかつて親友だったマドカとの因縁が映画の主軸となり、アタル自身が事件の容疑者へと仕立て上げられ彼もまたマドカへのシンパシーを感じていく。ダークナイトやスカイフォールを彷彿とさせる自分自身の影の存在の物語で、丁寧な演出をやれば普通に面白い映画になるはずだ。

だがこの映画の監督はダサいギャグ、小ネタ、楽屋ネタばかりに注力することが面白さに繋がると考えているようだ。マインドコントロールを舞子のコレステロールと聞き間違えるというおどけたギャグ、捜査会議で平気でふざけた顔をする、アニメっぽいコミカルなキャラ付け、捜査の張り紙を張っていちいちガッツポーズをする刑事、メタっぽいカメラ目線、警察署のスローガンに「ノーモア映画泥棒」などシリアスな物語に似つかないどうしようもないギャグばかり入れてくる。別にギャグを入れるなとは言わないし製作者側はテレビドラマでの空気を尊重したのかもしれない。だがせっかく映画ならではのシリアスな物語を空気の読めないギャグで潰すという選択肢を取るとは汚い言葉で申し訳ないがバカじゃないのかと思った。おかげでどうでもいい軽い話に成り下がったと思う。

脚本自体もイマイチ納得しづらい展開が多い。新キャラクターらしい義足の管理官の偏見ぶり、無能ぶりは腹立たしいし、アタルの保護者的なFBIの人の真意も見えない。万能なコンピューターウィルスを持っているマドカの犯行ももっとやることないのかと思ってしまうほどのショボい犯罪ばかりだし、容疑の晴れたアタルはマドカがまだ捕まってないのにほのぼのパーティもどきに興じる始末。ギャグに注力する暇があるならもっとこういう惹きつける展開を練る方に注力するべきだ。画もトリック並みにチープの一言だ。たとえベラージオホテルの噴水を撮って映画らしい豪華さを演出しても変わらない。

役者陣も精一杯頑張っていたと思うが、元々のキャラ設定が荒唐無稽でふざけているため本当に見ていて辛かった。特に北村一輝や栗山千明、田中哲司の演技は見ていて本当に殴りたくなるほどイライラさせられる。あと外国人キャストもテレビの再現ドラマ級の演技だ。

この映画を見ていてずっと堤幸彦っぽいなーと思っていたら監督の木村ひさしは彼の弟子なのだそうだ。堤幸彦もあまり好きではないが彼の悪い部分が集結しだと言っても過言ではないと思う。こんな腰砕けな作品は「2時間ドラマでやれ」としかいえない。
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