なまにく

トゥ・ザ・ワンダーのなまにくのネタバレレビュー・内容・結末

トゥ・ザ・ワンダー(2012年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

テレンス・マリック監督自伝映画二作品!と思って観てみると驚くぐらいには、マリック監督のモデルである主人公のニールが全く喋らなくて驚いた。殆どの視点がオルガ・キュリレンコが演じるマリーナであり、まるで彼女の物語だと言わんばかりに美しく映り続ける。
前作の『ツリー・オブ・ライフ』や次作の『聖杯たちの騎士』でも確かに主人公は喋らずナレーションが多いとは思っていて、それはあくまで回想としての役割だと思っていたんですが、そもそもマリック監督が寡黙な人間であることが判明。いや、確かにインタビューには全然出ない人だとは知ってたけど、シンプルに喋らない人なんだ。なるほどね。
今作ではマリック監督が20年間程世界を旅すると言って映画を作らず、そのまま突然失踪した理由がこの作品で描かれているそう。パリで出会った美しい女性と恋に落ちてアメリカのオクラホマ州で暮らし始めるけど、文化の違いに戸惑いそのまま離婚に至る。その過程でレイチェル・マクアダムスが演じる幼馴染のニールに恋に落ちて次の妻になるんだけど、そこまでは描かれてない。だから突然現れて突然いなくなる仕組みに置いてけぼりになってしまうけど、前作も次作もそのパターンが非常に多いので慣れるしかない。
表面的な恋がそのまま萎えていって、憎しみになったり虚無感に駆られたりする模様は恋愛には割とよくある話だし、この場合寡黙で何も対応する事ないニールが悪いのがよく分かるんだけど、このコミュニケーションや対応力のなさは他の場所にも影響してくるよねと言わんばかりに、環境保護の調査員としての仕事の取り組み方、対比として置かれる神父の存在が、尚ニールが駄目な人として描かれてる様に見える。
そして、マリーナの娘のタチアナにも「父親面しないで!」と言われる始末。中身のない、表面的な優しさしかなかったのでしょう。厳格な父親を嫌っていたのにも関わらず同じ性格をしていたとなるとショックは大きいでしょうね。事実かどうかは分かりませんが。
また、文化溢れるパリからオクラホマ州に住むというところも、その中身のなさを際立たせているように見えます。あまり詳しくないですが、インディアン部族の強制移住地として作られた州ですから、映像でも分かるように建物や景色はなんだか物悲しく感じられます。ポスターのモン・サン・ミッシェルとは程遠い。
この経験からニールは愛とは何かと問い始める。意外と内容が思っていたよりもシンプルで伝わりやすく(とは言っても分からない事の方が多い)、案の定映像が美しいので観ていて気持ちがいい。
次作『聖杯たちの騎士』は愛とは何なのかと求めて女性との関わりを描いている。多分反省したんやろな。
なまにく

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