Jeffrey

ウォー・レクイエムのJeffreyのレビュー・感想・評価

ウォー・レクイエム(1989年製作の映画)
2.8
「ウォー・レクイエム」

冒頭、鐘が鳴る中、キャンドルの炎が燃えるショットで始まる。実際の資料映像、モノクロの戦争描写、オペラ、ビジュア・ルインパクト、殺害、レクイエム、苦悩と葛藤。今、壮大なビジョンが映し出される…本作は異色の映像作家デレク・ジャーマンが、1988年に監督した戦争を圧倒的な映像美と荘厳なクラシック音楽で描いたヴィジュアル・オペラの傑作とされており、このたびBDボックスが発売され初鑑賞したがすごい。彼の作品と言えば全画面が青色のまま終わってしまうと言う前代未聞の睡魔映画「BLUE ブルー」とその他少ししか見たことがないのだが、やはりブルーが強烈に自分に合わなかったため、ずっと避けていた作家の1人である。しかしながら、今回紀伊国屋から発売されたため購入して3作品を見た(テンペストは既に鑑賞済みだったが)。イギリスを代表する音楽家ベンジャミン・ブリテンの曲"ウォー・レクイエム"にのせて、ジャーマンが映像美で綴ったオペラ映画駄である。

本作に使われているのはブリテン自身の作曲・指揮によるロンドン交響楽団演奏のもので、ブリテンの生涯に渡るパートナーであるピーター・ピアーズがテノールを担当している。そして、ソプラノにはガリーナ・ヴィシネフスカヤやバリトンにはディートリヒ・フィッシャー・ディースカウという三人の歌手を起用している。主演は"カラヴァッジオ"以来、ジャーマン作品には欠かせない存在となったティルダ・スウィントンである。彼女が出演した「ザ・ガーデン」も当時レンタルしてみた。正直どういう映画だったか、全然覚えてないけど。本作は戦争を圧倒的な映像美を壮厳なクラシック音楽で描いたビジュオペの傑作で、20世紀に起きた実際の戦争の記録映像を引用しながら、壮大なイメージが繰り広げられて行く。

楽曲"戦争レクイエム"はイギリスの作曲家ベンジャミン・プリティが1962年に発表し、合唱パートのテクストにラテン語のカトリック典礼文とイギリスの詩人ウィルフレッド・オーウェンの詩をミックスさせた作品である。オーウェンの詩は戦争に直面した兵士の苦悩や葛藤を表現していて、自らも第一次世界大戦に従軍、25歳で戦死した。音楽はブリテン自身が指揮したロンドン交響楽団の演奏になる。劇中で、スウィントンが三つ編みをする長いワンショットがあるんだけど、すごく魅力的。やっぱり彼女の輪郭とか女神レベルで美しい(笑)。本作は、第1章レクイエム・エテルナム (永遠の安息)、第2章ディエス・デイ(怒りの日)、第3章オッフェルトリウム(奉献唱)第4章サンクトゥス(聖なるかな)第5章アニュス・デイ (神の子羊)第6章リベラ・メ(我を解き放ちたまえ)の6楽章から構成されている。

さて、物語は第一次世界大戦で亡くなった詩人のウィルフレッド・オーエンと、一人の従軍看護婦の話。広島やベトナム、フォークランド紛争などに言及して、実際の戦争映像資料の数々が映し出し、2人の物語を静謐に描いていく…と簡単に説明するとこんな感じで、問答無用でデレク・ジャーマン苦手である。やっぱり無理だ。面白みもないし、何だろうとにかく受け付けない残念ながら。ファンの方々には申し訳ないけど。別にオペラ嫌いってわけでもないけど、どうしても睡魔に襲われる。美術セットやロケーションなどは凄いと思うこの作品については。
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