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ピンクカット 太く愛して深く愛してのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

 個人的にあまり魅力を感じない主演陣、クサい台詞の応酬、棒読みなど、あまり良くない映画だった。その中で不意に森田芳光的手腕を発揮した演出が煌めくのも一瞬、風の前の塵に同じ…。この後に「家族ゲーム」を監督しているのだから恐ろしい。今作はその前触れとかを特段感じるわけでもなく、凡庸なピンク映画であった。

 ただ、そのクサさやダサさは昭和という時代特有の臭気を漂わせており、そういった臭いを知るには良い作品だった。「バイビー!」と女は明るく言う。「エッサエッサ、エッサッサ」と男は自らを奮い立たす(この公園で宙に浮遊するシーンマジで唐突で意味わからん笑)。ピンク映画特有のキッチュな色味の小道具たち。主人公の家にあるパチーノのポスター(主人公とパチーノを類似させようとするかのような配置だったが、あまりにも演技も表情もかけ離れていた)。おもちゃの銃を構えてヌーヴェルヴァーグ的第四の壁破壊に挑んだり…。ラストのミュージカル締めがなんとなくちゃんと締めになんのオモロイ。

 背景と被写体のズレ。背景に対し、人物が静止しているのにズレていく、おそらく人物の足元にはレールがあってその上に乗り、妙な平行移動をみせる。この不自然さがやたら頻出しており、内容とか関係ないけど撮りたいものがあるんだ!と強引に入れ込まれていたように思える。

 葛藤とかあるんだけど、まぁ当人たちの演技が全然深刻そうではないので、非常にフラットに物事は進んだ。それでも、人物たちのこの中身のないような演技が、のちの「家族ゲーム」みたいな希薄で不気味な人物像へと繋がっていると言えるのかもしれない。
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