女子サーフィンの佳作「ブルークラッシュ」の続編・・・と言っても、前作とは話のつながりはないし、キャストも違うし、舞台もハワイじゃなくて南ア。

前作はサーフィンの映像が美しく、そして暴力的なまでの海の魅力が大迫力で存分に描かれていましたが、今作はそういったシーンの魅力は数段おちます。
かわりに、能天気なサーフィン・コミュニティやロードムービーっぽい部分が、自由なカルチャーとしてのサーフィンの魅力を伝えてくれる映画になっています。

南アというと未だにアパルトヘイトのイメージが根強くて、この映画で描かれるカラっとした楽しげな雰囲気の南アは、映し出される海やサファリの自然が新鮮で興味深かったです。

ストーリーは、正直ありきたりですが、登場人物たちが魅力的で、真の悪人が出てこないのも後味の良さに一役かっていると思いました。
いきなり友情が復活したりするのは急だったりしますが・・・

音楽もノリが良いですね。なかなか気に入りました。

主演のサーシャ・ジャクソンはルックスも少々キツめですけど、前作のケイト・ボスワーズよりかは良かったんじゃないかな。
前作にはミッシェル・ロドリゲスが出演していましたが、本作には「サプライズ」や「パニックマーケット3D」のジャーニ・ヴィンセンが出ています。

南アの自然の美しさ、どこまでも自由(すぎると思うけど)な人びと、そして、どこか野暮ったいところもあった前作と比べてフワフワとした軽さが持ち味の続編。
個人的には、前作より好みでしたよ。

※再レビュー

セル・ブルーレイにて

爽やかな佳作！！　サーフィンに熱中するカリフォルニアのお嬢さまが口うるさい父と喧嘩し、サーファーだった亡き母の “形見” を持って母の出身地である南アフリカへ独りっきりで初旅行。
いい波アリマス。男女五人物語デス。
うん。半端ロコガールのキラーウェイヴ攻略シーンしか取り柄のなかった前作『ブルークラッシュ』 とは何の関連もない、カッコよさとストーリー性がバランスよく溢れる万人向けの良作だ、こっちは！　20世紀の名作ドキュメンタリー『エンドレス・サマー』でサーフィン聖地としてのキラキラな南アフリカを知った私からすれば、約半世紀ごしにフィクションでこそ完結をみた “エンドレスな何か” がまっすぐ来るプリティー作だよ、これは！
主人公ディナは味のある普通の子。旅先で友達になってくれたのは黒人の美人さん。意地悪してくるのは白人の美人さん。そして白人イケメン二名（強気にいろいろ動くお坊っちゃんVSスイートな優しい奥手くん）は仲良し同士みたい。そんな主要五人のあいだに、菱形関係（＝ダブル三角）をはじめとしたイイ意味で少女漫画的な図が小気味よく発展。イイ意味でだけ少女漫画的なの！　とっても見やすいから美男美女揃いがたぶん誰にも嬉しいはず！
家族、友情、旅、恋、争いと仲直り、生と死、、の、バランスよい配分がポップ。
普通顔の主人公と美人黒人との仲違いのところの演技（特に主人公の面構え）、すばらしかった。
主人公と父（これまた顔採用風のイケメン）との両者落涙シーンとかはすばらしくはなかった。しかし父には「おまえはここでサーフィンをして…　いったい何をしてるんだ？　おまえを理解したい」と鋭いところを突かれる。月夜の色もいい。
大型バスとかもいい。
南アフリカは右ハンドルの国。何げにそういうのも落ち着く。

サーフィン内容は、臭みのない21世紀ショートボーダー向けの振り回し＆エアリアル！　ローカルによる排除問題または前乗り（☜反則）の問題からスタートしてパドリングや波待ちからのテイクオフやワイプアウト等々を精確に教科書的に拾ってスロー再生を多用して、カメラ位置もボード上に腹這ってる時の目の高さ（小津的低さ？　海小津！）が多くて、サーフィンを単に外側から姿としてばかり描かずサーファーの皮膚感覚みたいなところに即してくれてます。ことさらカッコよく描かずに普通に泳がせて立ち上がらせて結果としてことごとくがカッコいい、という理想的水上撮影・編集。
ただし、主要女優たちがＣＧ処理ありで乗ってるよう見えちゃうシーンが、特に前半、なくもなかったような。。（崖上シーンとか明白な合成があったから、きっと海上でも。。。）
ともあれ、地に足の着いた（水に足の着いた？　時々飛ぶけど　笑）等身大な人物たちの息遣いが聞こえるふうで等身大なドラマ（空間的には地球半回り移動だけど！）に好感なんだ。それに、、「超大波」か「水死」に頼りがち、というサーフィンフィクションの呪わしいありふれを、この映画は「女子が競い合うことのお花」と「旅ムーヴィー性」と「“家族”“自由な精神”“探し求め”等のキーワードと、サーフィンとの、さりげない不可分性」によって軽やかに壊してる。主役のをはじめ内面造型（亡き母のこと／父との葛藤とか）がちゃんと出来てる一方で、小難しくはしないポップでカラフルでエネルギッシュな展開がむしろシンプルっぽくて、ナカナカ強い脚本！って思ったよ。
例えば、第一クライマックス（競技会）では美人黒人を立て、第二クライマックス（自由に沖へ出て）で主人公が立つ。波の高さとかじゃなく、あくまでも技（エアリアル）とグリーンルーム（チューブ）くぐりで爽快感を。何というか、野蛮じゃないサーフィン物語の模範式を一つ見せてもらった！！　きっと十八才以下の鑑賞者にもわかりやすいこのストーリー、いい意味で、本当にいい意味で（少女漫画的に）若い。要は、観客をびっくりさせる乱暴さみたいなことのために大波や水死を撮るんじゃなく、観客の心を海と生に引き込んだ後にサーフボードが何を残すか、だよ。
にしても、黒人美人（名前はプッシー）と意地悪白人美人（タラ）とイケメンの特に甘いほう（ティム）、常に映えてた！　何この甘さズルい！

そして、この『ブルークラッシュ２』の最も褒めたいところは、主題が「すべての不調和の、和解」であるってこと。そう、サーフィンはそれを伝えるための最適な素材ってだけで、真に私たちを助ける要素は、主人公と親とか、現地の美人同士の争い（セリフとしては一度も掲示されないけれど、ぶっちゃけ、黒人対白人だろうね！！　ゼッタイにこれはある）とか、殴り合う男同士とか、設定段階からふんだんに用意されたそういう一切の不調和が、和解へと収斂されるこの「美しさ」だろうね。
そう、意識しちゃうんだ、かつてアパルトヘイトの国だったってことをね、私は。そういう場で、みんながみんな、最後に調和する、それを「幼稚」「チープ」って切り捨てていいのかな。私は、この映画を幼稚だと思わない。チープであるよりも断然、豪華だし。単なるお気楽なハッピーエンド映画だとも思わない。
第一クライマックス（ちょっと泣けた）で一旦主要人物たちがみーんな溶け合った、その後、まだ小さな不調和が生まれ出るんだ。南アフリカに着いた最初にカリフォルニアガールの傲慢さからか前乗り気分（☜反則）っぽな勢いでスタートした主人公が、ラストでは儀式的なまでに礼儀正しく淑やかに穏やかに（そしてメラメラと内面だけ燃やして）漕ぎ出す。にもかかわらず、それでもまだ現地サーファーたちに冷たいこと言われたりする。でも、そんな新たな小さな不調和たちも、新たな小さな和解たちによってたちどころに解消する。この小解消こそが、和解映画としての真骨頂部分だと思った。
さらにその後の、エンドロールのところの、“大家族” と称するサーファーたち横一線ずらりの行進。二十四人二十五脚みたいな。まったくの横並びで誰の勝ち負けもない。大調和の映画！（これアメリカであんまりヒットしなかったらしくて日本でも劇場未公開だったそうだけど、製作に名を連ねてる南アフリカではきっとみんなが観たんじゃないかな！？）
さらにさらに、エンドロール後半の、とっても楽しいコーダが好き！！　何て可愛い映画なんだろ！！　人間が好きになるよ！！！

私も、この映画みたいな人になりたいな。主人公みたいな人になりたいってんじゃなく、、、カッコよくて、可愛くて、わかりやすくて、浅くはなくて、必死さと贅沢さが半々で、予定調和よりはいくらか丈夫な大調和があって、人間が人間を好きになるささやかなきっかけになりうるこの映画のような、波にも風にも負ケズな者に私はナリタイ。


［つたや］

• #１よりも２が良い
• #surferMari

「ブルークラッシュ2」とあるが、続編ではないし雰囲気も全く違う。前作よりはサーフィンの映像が長かったり、舞台となる南アフリカの文化や素晴らしい大自然にふれることができる。