イチロヲ

濡れた週末のイチロヲのレビュー・感想・評価

濡れた週末(1979年製作の映画)
4.5
工場で事務職に就いている女性(宮下順子)が、妻子ある社長(山下洵一郎)との愛人関係に終止符を打とうとする。三十路直前の独身女性による、虚無的恋愛からの脱出劇を綴っている、日活ロマンポルノ。宮下順子が表舞台から降りる直前の作品。

不倫行為の中毒性に溺れる女性の、もがき苦しむ姿を追っている作品。心と体が乖離した状態にある登場人物たちが、「肉体の繋がりを求めるけれど、心は繋がらないまま」という、宙ぶらりんのセックス劇を繰り広げる。

完全にロマンポルノの紋切り型だが、若い世代の恋愛観を絡めていく過程に、魅力が詰まっている。主人公と若年カップル(亜湖&安藤信康)が同居してからの2段ベッドの描写、社長の幼子に聞かせる赤ずきんの童話など、随所に暗喩が感じられる。

健全な恋愛ができない女性の敗北の美学と新たなる旅立ちを描いている、ロマンポルノの教科書的な作品。全方位に倦怠を覚える、ポスト・シラケムードに強い共感を禁じ得ない。
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