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皇帝と公爵のBaadのレビュー・感想・評価

皇帝と公爵(2012年製作の映画)
4.0
ポルトガルの名プロデューサー、パウロ・ブランコ制作、ラウル・ルイス監督原案の映画、ということで、戦争映画だから若干マシだろうとは思いつつも、さぞかし難解で分けのわからない映画かと一抹の不安を抱いてみましたが、拍子抜けするぐらい穏やかでわかりやすい群像劇でした。
オリヴェイラなんかと較べればとても取っ付きやすい。

ポルトガルを舞台にしているという時点で地味になるというのは想定内だったのですが、予想通りに淡々とした話の運びなのに、あまり有名じゃない一般庶民を演じる役者さんたちが一様にルックスもよく演技もしっかりしていたので、退屈せずに最後まで見ることが出来ました。
脚本もひねりが利いていてよく出来ていたと思います。

一つだけ残念だったのはジョン・マルコヴィッチ以外の有名どころの俳優さんがほとんどお飾り状態で、フランス軍関係の役を演じた人たちは台詞もほとんどないに等しい状態だったこと。
マチュー・アルマリックはただ静かに座っているだけという印象でした(苦笑)。

あまり知られていないナポレオン戦争のフランス側の負け戦のエピソードで、ポルトガルは王室がブラジルに引っ越してしまい、民衆だけでイギリスの支援のもとに戦ったということらしいですが、タイトル詐欺で客引きをするのではなく、その辺の知られざる歴史のエピソードをアピールした方が本来見るべきお客さんは集まったのでは?

戦争を巡るドラマとしては地味ですが、楽しめました。

ただ、こんな非常時でも、登場人物のドレスコードがしっかりしていて、女性は階級がきっちりわかるような身なりで動いていたのには驚きました。この辺、どこまで史実に忠実なのかちょっと気になります。

最初は目が慣れなくても最後には人間関係がおおよそ理解できたのですが、唯一、フランス軍のスパイをしていた軍人がどういう動きをしていたのかが辿れませんでした。

(戦争を背景とした群像劇の佳作ーただし看板に偽りありでスター俳優は活躍せず 2014/3/22記)
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