ストレンジラヴ

タイピスト!のストレンジラヴのレビュー・感想・評価

タイピスト!(2012年製作の映画)
4.3
「才能はひとつあれば充分だ」

この物語は、あるドジな田舎娘がタイプライターひとつで世界に挑む闘いの記録である。
最高の気分だ。悶絶の111分間。罵ってくれていい。僕はPC世代だがタイプライターの打鍵音が大好きだ。あの打鍵音を聴いているだけでもう快感なのだ。だから自宅のPCのキーボードもわざわざタイプライター仕様の軸のものを使用している。それも日本語配列・US配列共にだ!
主人公ローズ(演:デボラ・フランソワ)は、何をやらせてもダメな娘。田舎を出たくて応募した秘書の仕事も試用期間でクビになってしまう。しかし彼女には秘密があった。そう、タイプライターを前にするとケンシロウと化すのである。そんな彼女に目を留めた雇い主ルイ(演:ロマン・デュリス)は「タイプライター早打ち大会」への参加を持ちかける。
最初から最後までオシャレ、それでいてずっとタイプライターの打鍵音を聴いていられるのだから僕からすれば天国以外の何者でもなく、文句のつけようもない。そして作品全体にはもうひとつうれしい仕掛けが。調べてみると、どうやらレジス・ロワンサル監督はデボラに対し、役作りの一環としてオードリー・ヘップバーンの作品を徹底的に鑑賞させたらしい。道理で髪型が1957年~1959年頃のオードリーにそっくりだ。そしてデボラ自身、美人というよりはクセになるキュートさで、ここにオードリーっぽい髪型を加えると不思議と金髪のオードリーのように観えてくる。とてもチャーミングだった。オードリーらしさは彼女だけに留まらず、もとより作品全体が「マイ・フェア・レディ」ではないか!オードリーを愛してやまない僕としてはこの点も至れり尽くせりだった。
クライヴ・リチャードソン「Girl On The Calendar」から始まるオープニングもフランスらしさ全開でとにかく好き。「恋人たちの予感」に続く「僕にとっての味噌汁枠」に堂々のエントリーとなった。
と、ここまで書くのに約15分。遅い!遅すぎる!1本指打法で打ち込んでいるから遅いんだよ!打鍵の時は指を10本使いなさい!