kojikoji

危険なプロットのkojikojiのレビュー・感想・評価

危険なプロット(2012年製作の映画)
3.9
No.1527
2023.11.27視聴
オゾン-3(2012作品)2/31

 監督はフランソワ・オゾン
オゾン監督は、1990年代に登場したフランス監督。「初期には悪趣味な題材を人工的な美術とキッチュ(低俗なもの、悪趣味なもの、陳腐なものなどを意味する)な映像を得意とした。」とされているが、これがどんな映画なのか未観なのでわからない。ところが2001年作品「もぼろし」で作品の印象が大きく変わって、この作品はフランス映画の秀作と評価が高い。私は2003年作品「スイミング・プール」2018年作品「婚約者の友人」の2本しか観ていないが、この2作品ともサスペンス仕立てで面白く、「まぼろし」の路線にあることは間違いない。

 「危険はプロット」は2012年作品。この映画もまた2作品と同じ路線の映画でサスペンス仕立てだ。フランスでは大ヒットだったらしい。極めてフランス映画らしい映画で大ヒットも頷けるし、主人公クロードを演じたエルンスト・ウンハウアーがいかにもフランス人好みの若者だから、きっと彼の存在も大きかったのではないかと思う。映画の内容がダブってしまうが、中年女性がなぜかほっとけない、気になる青年のようだから。

 国語の高校教師ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)はある日、担当している生徒クロードの作文に目が止まる。彼は作文を「続く」で終わらせていた。そして次に提出された作文は前回提出された作文の内容の続きであり、またしても「続く」とされている。ジェルマンは彼の作文に惹かれ、「続き」を読みたくなる。ジェルマンはそれを作文というより「小説」として読んでいた。彼自身もまた嘗て小説を出版していたが、それは平凡な作品で彼自身が満足できるようなものでなかった。
 クロードの「小説」は彼の友人の家庭を覗き見るような内容で、どこまでが現実でどこまでが架空なのかわからない。ジュルマンはクロードの才能とこの小説の内容にのめり込んでいく。それが破綻への道とは知らずに。

 エンルスト・ウンハウアーの常に嘲笑を湛えた表情は、この友人の家族に対しても、ジェルマンでさえも常に見下しているようだ。内面にドス黒い思考が底知れず漂っている。それが物語の展開に惹かれる一番の要素だと思う。彼は次に何を言い出し、何をしでかすかわからない。
  高校教師ジェルマンを演じたファブリス・ルキーニはいかにも小説家を目指すが挫折してしまった凡庸な才能の高校教師にピッタリの役者だ。私はこれまでに彼の出演作品「ボヴァリー夫人とパン屋」を観ているが、そこでも同じように、小説好きのパン屋で近所に引っ越してきたボヴァリーという名の夫人を小説ボヴァリー夫人にダブらせる役を演じすごく印象的だった。この映画も面白いので未観の方はぜひご覧下さい。

 この「危険なプロット」はオゾン監督作品を観たくなるのに十分魅力的な作品だった。
しばらくオゾン監督作品を追っかけてみよう。
kojikoji

kojikoji