ないで

危険なプロットのないでのレビュー・感想・評価

危険なプロット(2012年製作の映画)
4.3
フローベール高校の国語教師ジェルマンは、生徒クロードの作文に魅了されて個人指導を始める。ジェルマンの望む文章を書き続けるために、クロードはある提案をする・・・

クロードくんが作文にしたためてくるのは、クラスメイトのラファくんの家庭に入り込みたいという危うい欲望。その文章にジェルマン先生はまんまとのめり込む。16歳の孤独な美少年は、ラファの母親を誘惑するべきなのか、息子の代わりに父親の懐に潜り込みたいのか、それとも息子とホモセクシャルな関係を結ぶのか。いやいや、そんなありきたりな展開ではいけない、もっと読者を翻弄しないと!

そんなジェルマンと共にクロードの作文を読む彼の妻は画廊のキュレーターをしていて、オーナーの交代のせいで扱うアートの方向性に迷っている。彼女の迷走とジェルマンがクロードに書かせようとする文章の破綻は恐らく対応していて、ブラックな笑いが意図されているんだと思うけれども、ちょっとこなれてない感じもしました。ウディ・アレンのオマージュであるらしいのは察しましたが。

やがてラファくん一家はクロードを締め出して中国へ移住することになり、暴走の果てに職も家庭も失ったジェルマンと退学したクロードは再会する。そもそもパパとママと僕との聖家族なんていうのは、そこにあるけどそこにない、幻のようなものだったのかも知れない。本当にそこにいたのは、書けなくなった父と彼を介護する息子だけだったのかも知れない。ラファくんに虚数を教えようとしていたクロードにはそれが分かっていたのかも。そんなことを考えたりしました。

あ、あとジェルマン先生がどさくさに紛れてラファくんに渡していた「テルレスの惑い」こと『寄宿生テルレスの混乱』は是非読んでみようと思いました。
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