ーcoyolyー

野獣死すべしのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1980年製作の映画)
3.8
バッキバキに世界観キメてる。よくぞここまで恥ずかしげもなく開き直って大真面目にやりきったな。これは清々しい。これが角川春樹イズムか。

松田優作がカリスマなのってこういうことか。『探偵物語』や『ブラック・レイン』は観ていたのだけどそこに至るまでの欠けたピースが埋まった感じ。そしてその欠けていたものが一番重要だった感ある。この作品での松田優作は松田龍平と松田翔太が合わさったような顔や雰囲気で、あの二人それぞれ父親に似てたんだなとしみじみした。龍平の方はたまに父親を彷彿とさせるところあるけど翔太もやっぱり似てるのね。

バッキバキのハードボイルド映画かと思ってたらそれよりバッキバキのクラシック映画で、選曲したのはかなりクラシック音楽に造詣が深い方とお見受けした(村川透監督、お兄様が指揮者なんですね)。

初っ端に選曲してきたのがショスタコーヴィチの交響曲第5番第1楽章なの何より痺れましたよね。あそこ、ベートーヴェン使いがちでしょ?ベト7とか運命とか第九とか。でもそこであえてのショスタコ。1楽章。初っ端に1楽章流したことでクライマックスではタコ5の4楽章が脳内で押し寄せる羽目になるの計算してて上手いな、あれ。ティンパニがデンドンデンドンデンドンデンドン押し寄せてくる。タコ5の直後のモーツァルトでこの人物の振り幅の大きさも描写してる。ライトモチーフとしてのショパコン1番よりその冒頭選曲2曲の方が印象に残った。銀行で流れてるチープな編曲のショパコン1番はちょっとクセになりましたけども。

リサイタルのショパコン1番は最初録音かと思ったんだけど3楽章のピアニストの転び方がヤケにリアルでこれはもしかして実演一発撮り?と思ってエンドロール見てたら東響とピアニスト花房晴美呼んでフルで会場貸し切って演奏してたんだな。金掛かってる。これが角川春樹イズムか。模造刀ではなく真剣使うのと同じ精神ですね。
ーcoyolyー

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