ベビーパウダー山崎

ながらえばのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

ながらえば(1982年製作の映画)
3.5
本筋は笠智衆が入院した老いた妻に会いに行くまでの話だが、アル中の夫にDVされまくっている長山藍子が、その抱え込んだ怒りや悲しみを父である笠智衆にぶつけるしかない脇筋がたまらなく良い。父ではあるが、まず男であり、夫婦や親子の愛憎、家族のしがらみ、立場と状況ふまえての関係性が多角的な視点から描かれている。強い本筋があって、終盤で一刺し出来る脇筋がしっかりと用意されている高度なシナリオ。山田太一は結論ではなく、その過程を物語にしていく。
笠智衆が途中下車して泊まる宿でも、今さっき妻と死に別れた宇野重吉のくだりが物語に突如として織り交ぜられたりして、人生とは死と暴力のハードボイルド。