カッチェ

MAMAのカッチェのレビュー・感想・評価

MAMA(2013年製作の映画)
3.5
感想①「ホラーよりもダークファンタジー」
アルゼンチン出身の新鋭監督アンディ・ムスキエティが手掛けた短編映画を、「パンズ・ラビリンス」のギレルモ・デル・トロ監督が製作総指揮をし長編映画としてハリウッドでリメイクされた作品。
ハリウッドでは無名なムスキエティが初監督した作品ながら、全米初登場1位に輝き話題となりました。タイトルからも予想できる通り、ホラー映画でありながらドラマ性もあり、ダークファンタジーとしての要素も強いです。ホラーが苦手な方でも、挑戦できるかもしれません。

感想②「短編と長編との違い」
精神病が原因で妻を殺害してしまったジェフリー(ニコライ・コスター=ワルドー)は、3歳の娘ヴィクトリアと1歳のリリーの幼い姉妹を車に乗せ自宅から逃走する。しかし山中でスリップ事故を起こしてしまい車で逃走することが不可能となった3人は、森の奥にひっそりと立つ山小屋を見つけ身を隠すことにする。しかし、これからのことに対して悲観的になってしまったジェフリーは衝動的に娘たちをも手に掛けようとするが、小屋に潜んでいた得体の知れないモノが彼の前に突然現れ、ジェフリーを殺してしまう。

それから5年後、小屋で奇跡的に生きながらえてた姉妹が発見され、父ジェフリーの弟であるルーカス(ニコライ・コスター=ワルドー、ジェフリーと二役)とその恋人であるアナベル(ジェシカ・チャステイン)の元へ引き取られることになるが…。

3分程度の短編映画の方は、とても短いので詳しい状況がわかるような部分は一切なく、ただ単純にママと呼ばれている得体の知れないモノへの恐怖がダイレクトに描かれている作品でした。ママと呼ばれているモノの動きがとにかく気持ち悪く短編ホラーとしては良作。

そしてそれを長編作品としたのがこの映画です。製作総指揮がギレルモ・デル・トロということもあり、長編の方はホラーというよりはダークファンタジーに仕上がってます。もちろんママと呼ばれるモノの動きは相変わらず気持ち悪く、なぜ姉妹がこの得体の知れないモノをママと呼び慕っているのか最初は理解できず、短編では表現されていなかった姉妹に対しての不気味さもうまく表現されています。

感想③「幼い姉妹の演技力」
映画の前半では、狼少女のように人間離れした行動をし言葉まで忘れてしまった姉妹の演技力に注目です。姉ヴィクトリア(メーガン・シャルパンティエ)は3歳まで両親と生活していたのである程度の記憶はあり、アナベル達に引き取られたあとは徐々に年相応の子供へと変貌していきます。

その絶妙な演技も素晴らしいのですが、やはりこの映画では妹リリーを演じるイザベル・ネリッセちゃんの演技が圧巻。この映画のポスターで得体の知れないモノにしがみ付いている子供がリリーです。ヴィクトリアと違いリリーは1歳のときに両親を失っているので、パパもママも記憶の中に存在しない状態。アナベル達の元へ引き取られたあとも、野生の獣のような行動や言動を繰り返すとても難しい役柄ながら、彼女は見事な表現力でリリーを演じてみせました。どのシーンも本当にリリーの表情がいいんですよ。

感想④「良質なホラー映画です」
短編作品や予告編だとホラー的演出を強く感じますが、怖いのは前半だけです。映画の前半パートはわりとホラー寄りに作られているので、ホラーが苦手な方はちょっと怖く感じてしまうかもしれません。
ですが後半はわりとハッキリとママと呼ばれるのモノの姿が映し出されるので怖さはやや半減。逆にママと呼ばれる得体の知れないモノと姉妹、そしてその姉妹を守ろうとするアナベル達の心情描写が中心となります。ホラーではなくダークファンタジー、怖さよりも切なさや悲しさを感じる作品でした。
カッチェ

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