マーチ

MAMAのマーチのレビュー・感想・評価

MAMA(2013年製作の映画)
3.5
『IT/イット “それ”が見えたら終わり。』が全世界大ヒット中のアンディ・ムスキエティ監督デビュー作。製作総指揮には『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』等でお馴染みのギレルモ・デル・トロ。

久しぶりに観たくなったので…
*多少ネタバレありなので、お気を付けください。


【下半期鑑賞映画寸評:2017】

《異色のダークファンタジーホラー》

幼少期に森で育った子どもたちが保護され、次第に母の愛を知っていく観察系ホラー映画なのかと思ったら全然違っていて、何とも切なくて遣る瀬無い…ただあれはあれで幸せなのかもしれないと複雑な気持ちにさせられるラストが待ち受ける作品でした。

観察系ホラーで恐怖を煽りつつも謎の “MAMA”という存在を仄めかし、そのバックボーンを徐々に解き明かしていくことで一種のサスペンス感もあるこの作品。ラストはまさかのダークファンタジーに昇華されるというなかなか異色の構成になっているのですが、あの鬱屈としつつも1つの答えを明示したラストを表現する上でダークファンタジーを持ち込んだのは大正解だと思う。なんかやたら神聖な瞬間がそこにはあって、物心ついた時に“MAMA”こそが母親だったリリーにとってはあれこそがハッピーエンドで、こっち側が勝手に「そっち行っちゃだめだよ!」と思うのは傲慢なのかもしれない。そしてそう思わせるように自然とジェシカ・ジャスティンの母性が少しずつ開花していく様子を上手く描写している。お姉ちゃんの方はまだ本当の母親と触れ合った頃の記憶があったから育ての崇拝者としての“MAMA”を捨て、自分たちのことを必死に理解し、守ろうとしてくれている現実的な新しいママを選んだ。ちょっとした経験や発達時の違いが自分の母親というものの記憶をすり替える。 “MAMA”がお化けの風体しているから現実味がないけど『そして父になる』と似た要素のある作品でもあって、一緒に過ごしたからといって母親になり得るのかという現実的な問いにも目配せしたストーリー展開がなかなか面白い。

アンディ・ムスキエティ監督は清潔なホラーを撮る監督だと思う。そりゃ気持ち悪いクネクネした彼の十八番的ゴーストクリーチャーの数々を見れば“清潔”という言葉は遠いようにも思えるけど、映画的な作りとかホラー的な構成としては凄く綺麗。清潔感がある。笑 だからこそ、このスタイルで自分のフィルモグラフィーを貫いて欲しいし、今作然り『IT』然りで証明されたようにエモーショナルな描写が非常に上手い監督だからホラーを排してドラマチックな展開だけに比重を置いた作品もいつか見てみたい!
(ただしばらくは『IT』の続編にかかりっきりなんでしょうね…それはそれで楽しみだけど。)


【p.s.】
下半期に突入しましたが、上半期鑑賞映画のレビューをまだ消化しきれていないため、下半期鑑賞映画も一部は寸評で投稿していきます。

いつもとは違い、極々短いレビューで投稿しています。暇があれば付け加える予定です。

従って、いつもの【映画情報】等もカットさせていただきます。

*詳しくは2017年7月3日に投稿している《『ローン・サバイバー』評》内の【p.s.】をご参照下さい。
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