菩薩

SOS北極… 赤いテントの菩薩のレビュー・感想・評価

SOS北極… 赤いテント(1970年製作の映画)
4.4
唐十郎(状況劇場)の紅テントに着想を得て制作された唐トーゾフのパニックアドベンチャー超大作、と言うのはもちろん真っ赤な嘘だが、この明らかB級エンタメ、もしくはいつサメ出てきてもおかしくない風の、8度7分の熱出しながら30分で作りましたみたいなジャケから想定されるものより何倍も見応えがある、なんせシロクマが出てくるし。ちなみに裏にはショーン・コネリー主演とデッカく書いてあるが、ショーン・コネリーは主演では無い、まぁいい役っちゃ役だが。

北極点に辿り着きながらその後遭難したノビレ将軍以下乗組員、彼等を救おうと極限の地に赴く者達と、彼等自身のサバイバルの行方。部下を見捨てて一人救出された将軍、40年経ってもその後悔は消えず、夜な夜な彼が救えなかった者達(その他関係者)による断罪裁判が行われる、そうして回想形式で話は進行していく。とにかく色々と常軌を逸している。なんせ舞台は北極、見渡す限り氷、八甲田山ばりに寒そうだし、そんな中で相変わらずアホみたいなカメラワークは健在である。例のシロクマにテントを襲われそうになるシーンだって中に人入っててもおかしくない本物シロクマがうろついてるし、しかもそのシロクマをこいつら食いやがる、ちゃんと「生で食ったら病気になるぞ!」と叱責する将軍、ちゃんと指揮しとるやん…。陸・海・空、縦横無尽にカメラは動き回り、バッキバキと氷を割りながら目的地を目指す本物の巨体砕氷船まで出現。テントを離れ自力で助けを求めに行く者も現れるが、当然の様にその内一人は力尽き自ら凍死を選択、このシーンを演じた役者さんガッツありすぎだし、ちょっと手足…真っ赤ですけども…。紅一点で存在感を発揮するC.Cことクラウディア・カルディナーレ、これがまた玉城ティナの元ネタ?ってくらい化け物地味ててどえりゃーベッピン、もはやCG。卑怯者!責任放棄!と世間の批判を浴び表舞台から姿を消したノビレ将軍、かたや彼を救おうとし命を落としたがめに英雄と崇められるショーン・コネリー、そんな歴史的事実を見つめ、二人の語り合いを通し、ノビレ将軍に贖罪の機会を与える。40年経てば軍服などもはや意味は無い、我等は寝巻きで語り合うべきだ、一人の人間として。自責の念に囚われ続けたノビレ将軍にも、遂に安らかな眠りは訪れるのか、まさに雪溶けならぬ氷溶けのラストに、細やかな感動を得る。
菩薩

菩薩