うにたべたい

アーリャマーン EPISODE I 帝国の勇者のうにたべたいのレビュー・感想・評価

2.4
国内製作の映画本数で二位のアメリカを抜いて、ダントツで世界第一位の国"インド"。
本作は、そんな映画大国インドで85%という超高視聴率をマークしていたテレビドラマ「アーリャマーン」を映画用に再編集した作品です。

スターウォーズのライトセイバーを彷彿させる武器に、スターウォーズのC3POを彷彿させるサポートロボット、そして、あのハリウッドの名作、スターウォーズを彷彿させるような壮大なスペースオペラで、そう、まるでスターウォーズを彷彿させるかような作品でした。
ただ、そこかしこでスターウォーズ的な雰囲気漂わせるものの、内容は似ても似つかない別もので、それどころか、もしスターウォーズファンの前でうっかり「スターウォーズっぽくない?」などと言ってしまうと、一緒にするなと怒られる可能性があります。
どうみてもそうなのですが、『スターウォーズのパクリ』はNGワードですね。

ストーリーは結構複雑です。
序盤に、結構な尺を使って説明がされますが、正直なところ頭に入ってこず、ちゃんと見ようと思ったら観ながらメモを取った方がいいと思います。
タール王国という国が宇宙にあって、その第二王子として「アーリャマーン」は生まれるのですが、先に生まれた凶暴な兄を王位にするため兄の母(アーリャマーンの母ではない)に命を狙われます。
母の機転により死んだことになったアーリャマーンは、武芸の達人「オーシン」のもとに預けられます。
時が流れて成長したアーリャマーンは、兄と兄の母の手から王国を取り戻すため、友人であるアンドロイドと共に戦いに赴くという展開です。
ただ、労働組合の長「ナーラック」というのが宇宙の支配を企む悪人で、兄よりもこちらと何故か剣を交えることが目的になっている様子です。
そのあたり詳しい経緯が説明されたのですが、聞き飛ばしてしまったというのが正直なところで、なぜこのライオン丸のような男と戦っているのかわからないままになってしまいました。

ちなみにインド映画といえば、唐突に挟まる歌と踊り、必要性皆無のカーアクションで有名ですが、残念ながら本作ではその要素はゼロです。
(やばいシーンだらけですが) ハリウッドのような大作を目指したようで、メリハリが感じられず、私は途中何度か船を漕ぐことになりました。
インド映画ではよくある上映時間が極端に長い途中休憩が挟まるような作品でもなく、2時間程度の尺となりますが、通しで見るには気合が必要だと思います。

ちなみにアーリャマーンは25歳の若者という設定ですが、見た目はどう見ても40過ぎのおっさんです。これで25歳は無理がある。
途中、戦士的な衣装にチェンジするのですが、中年太りした体型が悲しく、ドウミテモライトセーバーを振り回す姿はインド映画の懐の広さに感銘いたしました。
そしてアーリャマーンの覇気のない顔!口を半開きにして半目で中空見つめる表情がデフォルトで、失礼ながら凛々しさを感じるのは厳しいです。
13億人以上いるインドで、85%の視聴層がこの覇気のないおっさんの顔を手に汗握って見ていたということになるのですが、一体どういうことなんでしょうか。

アーリャマーンの兄もすごいです。
赤ん坊の姿が初登場シーンなのですが、全身真っ黒で二足歩行でガスガス歩き回ります。
ビビった王様はこいつを地下牢に閉じ込め、牢獄で咆哮するという、わかりやすい悪魔の権化のような存在です。
成長してもやっぱり言動は酷く、跡継ぎがいないからといって何を考えてこいつに王位を譲ろうというのか、誰か反対する人はいないのかと思いました。

ロボデザインも非常にポンコツで、CGも2002年公開作品とは思えないクオリティに逆にビビります。
さらに言えば、本作は"EPISODEⅠ"であり、最後までがんばって観ても本作のみで完結しません。
ミンティアで意識を保ちながらなんとか最後まで観たのに途中でぷっつりと終わってしまう絶望感。
そして"EPISODEⅡ"は出ておらず、気づけばアーリャマーンのように、口を半開きにしてなんとも言えない顔をしている自分に気づくわけです。
この映画を最後まで観たあなたがアーリャマーンであり、アーリャマーンこそがあなた自身だったということですね。恐ろしい映画やで。

そんなわけでとてもおすすめはできないですが、逆に興味を持ってしまった場合は観ても良いかと思います。
一応、視聴前にはスター・ウォーズを観ておいた方が、それっぽさをより感じられてベターかと思います。