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母の身終いのslowのレビュー・感想・評価

母の身終い(2012年製作の映画)
4.0
出来心から過ちを犯し、前科を背負うことになった中年の息子。末期の脳腫瘍と宣告された初老の母。出所後行くあてのない息子は、1人暮らしの母の家に身を寄せることになった。

母は尊厳死に自らの終を委ねる覚悟をする。
親と子になったその時から、母は強い自尊心から上手く愛を伝えられず、息子は自分は愛されない人間なんだと卑屈から抜け出せなくなった。折り合わない2人が過ごすその時までの日々が、この作品には記録されている。

ステファヌ・ブリゼは怒りを言葉でダイレクトに表現するので、その前後の淡々としたシーンとのギャップが凄い。しかし、だからこそ繊細な部分も際立って見えてくる。
また、ハネケの『愛、アムール』と比べて観ると、内容以上に考えさせられるものがあった。愛する者に迷惑を掛けたくないという気持ち。その気持ちを受け取る側の選択。そこには1ミリでも希望や後悔があったのだろうか。見落としてはいまいか、という自らへの不信感と死の恐怖がぼうっと浮かぶ瞬間に鳥肌が立った。
両作ともとても静かで、人物の命と感情を大切にした映画だったように思う。
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