えそじま

親密さのえそじまのレビュー・感想・評価

親密さ(2012年製作の映画)
5.0
「舞台演劇『親密さ』をつくった劇団が、それぞれの葛藤を作品に重ねながら公演の準備をする映画『親密さ』のなかで、その舞台演劇『親密さ』を実際に公演する」

という入れ子構造のなかで、劇中の観客役と映画を観るこちら側の観客が鏡のように対峙するあいだに近くて遠い世界がつながるあの不思議な空間。映画が舞台演劇に還り、また映画になっていく過程を”体験"する臨場感。

押し付けがましくなく、ただ自然に心を動かす原動力となって繰り返された「言葉は想像力を運ぶ電車です」という台詞を現前させる演出と脚本の力に圧倒されるやいなや、また「地下の暗闇を走る言葉もある」とそっとやさしく背中をさすられ、その不安定な心地よさは京浜東北線と山手線が田町駅をでて同じスピードで並行する瞬間の『君の名は。』で感動の最高潮に達する。

ジャン・コクトーがかつてその遺作『オルフェの遺言-私に何故と問い給うな-』のなかで「いわば映画は詩を運ぶ車」と書いていた。
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