あゆみ

親密さのあゆみのレビュー・感想・評価

親密さ(2012年製作の映画)
5.0
届かなかった手紙、伝えられなかった言葉、言葉にならなかった想い。
先走って入力したテキスト、不用意に発して傷付けた言葉、本心ではなくても一度世に放ったら決して取り消せない産物。

元来不完全な代物に頼ってわかり合おうとする滑稽さを笑い、原始時代に戻って歌でも歌って牧歌的に生きれたらと思う日もなくはないけど。

濱口監督の作品を体験すると、馬鹿の一つ覚えみたいにまた希望を感じている単純な自分に出会ってしまう。
全部書き起こして朗読したいくらい欲しかった言葉が詰まっていて、こういう心が揺れ動く瞬間のために自分は生きてるんだと本当に思う。まだ観られていない過去作もこれから生まれる傑作ももっと観たいから生きていたい。

「言葉は想像力を運ぶ電車です。各停があれば、仕事をしやすくする急行のような言葉もあって、わかる人にだけわかる快速のような言葉もある。多くの人が集まる場所にだけ停まる新幹線のような言葉もある。急行が各停をひととき羨ましく思うこともある」
「東急と副都心が繋がるように、思いがけないところと繋がったりする」
「本当は変わってほしいわけじゃない。変わらないで、そのままでいいって思ってほしい。でもそう思ってもらうためには、やっぱり変わってもらわないといけない」
「夜は明けるから好き」
「最初いい加減な気持ちで始めたことでも、後から変わることもある。いい加減な気持ちで始めたことがないならその幸運に感謝すべき。押し付ける傲慢さに気付くべき」
「どんな決断をして、どんなことをしてもいい。でもそれは私たちと繋がっていると思ってほしい。どんな決断をしても、決して一人で決めたことだと思わないで。私たちも、自分たちの行動がどこかであなたと繋がっていると思うから」
「大切なのはほほえみだ」
「暴力とは選択させないこと、選択肢を与えないこと」
「世界は情報じゃない。能力の高さに助けられもしたけど辛くなった。私は処理すべき情報か?それを言葉にして聞くのは尊重の対極にある気がする」
「尊重と尊敬」
「簡単なこと、自分が選んだ方がいい。選んだあと絶対に良くなる」
「言葉には限界があるんだよ」


2022.8.11 新文芸坐にて二回目
あゆみ

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