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女っ気なしの&yのレビュー・感想・評価

女っ気なし(2011年製作の映画)
3.9
【2013/11/10:ユーロスペース】「諸行無常」の哲学は、仏教じゃなくヴァカンスにこそ宿る!…フランス産ヴァカンス映画を観ると、いつもそんなことを思います。
「女っ気なし」というタイトルからすると冴えない男・シルヴァンが主人公のようだけど、これはシルヴァンを中央に据えた、美しい街と美しい母娘のお話。
静かで寂れてて、パリと違って優しい街にやってきた、一見ほんとに仲良しな母娘。ふたりは何でも受け入れてくれるこの街と、ただ受身なだけ(決して包容力ではない)のシルヴァンに触れて、少しずつお互いへの思いだったり、自然な心情を吐露していく。ジェスチャーゲームのシーンでは、その辺りの母娘のスリリングさをギリギリの微温で描いており、画的にもシルヴァンがふたりの間に挟まれているのがおもしろい。良いシーンだった。
シルヴァンにも母娘にもちょっとした事件が起きたヴァカンスだったが、それによって彼らの人生や母娘関係に劇的な変化がみられることはないだろう。ただなんとなく、毎年やってくるヴァカンスの一コマとして刻まれる古傷のあとの、皮膚のひきつれみたいにずっと残る出来事。ただそれだけ。
「女っ気なし」上映前に併映された「遭難者」を、上映後もう一度観たいと思った。あの夏のあとのシルヴァンはまた、「遭難者」に描かれる日常に戻ると思うから。
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