ボブおじさん

ゼロ・グラビティのボブおじさんのレビュー・感想・評価

ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)
4.2
これは間違いなく映画館で観るべき映画だ。雑音のない暗い映画館の中で見ていると自分が宇宙空間の中に放り出されたような孤独感を味わうことができる。

大きなスクリーンに映される宇宙空間の暗闇と映画館が一体化したような錯覚を覚え、異常な没入感に浸ることができたのを思い出した。

登場人物はほぼ2人。その多くの時間をサンドラ・ブロック演じるストーンが宇宙空間で孤立している状態だ。それが故に宇宙空間に取り残された時の孤独感を観る側も映画館内で体感することができる。

この宇宙空間と映画館の相性の良さを監督のアルフォンソ・キュアロンは子供の頃に体験しているはずだ。

キュアロンが本作に続き2度目のアカデミー賞監督賞を受賞した「ROMA/ローマ」で子供のころお手伝いのクレオと映画を観に行くシーンが描かれるが、その時に観ていたのが1969年に公開された「宇宙からの脱出」という映画だ。この時の体験がこの映画を作る一つのきっかけになっていることは容易に想像できる。

暗い映画館と一体化して、観る人が〝宇宙を体感する〟という子供の頃の身震いするような体験をキュアロンはこの映画の中で最新の技術を駆使して圧倒的なリアリティで実現させた。

子供の頃に観た映画の感動を今の観客にも体験させたい。宇宙のロマンよりも、もっと大きな人間のロマンを感じさせてくれる映画だった。

失って初めて、そのありがたさを実感するのは、親の小言と地球の重力、そして煩わしい人との関わりか。


2013年に劇場で鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。