TakashiIbayashi

ゼロ・グラビティのTakashiIbayashiのレビュー・感想・評価

ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)
4.6
名作『トゥモローワールド』のアルフォンソ・キュアロン監督の7年ぶりの帰還作。
前作で見せた脅威の長回しが更に進化していることに驚かされる。重力の縛りから解放されたカメラがまさに縦横無尽に動き回り、見るものを宇宙空間に引きずり込む。ここまで3Dで鑑賞することに意義のある映画を僕は知らない。
撮影に負けず劣らず、キャストの熱演も見逃せない。どんな逆境でも陽性な性格で切り抜けるサンドラ・ブロック。いい意味で地に足がついていないジョージ・クルーニー(過去に『UP IN THE AIR』という主演作もある!)。彼らの存在が遠い宇宙の片隅の暗い話を一級の娯楽作品に仕立て上げている。ほぼ二人芝居といってもいい閉塞された状況でも最期まで鑑賞に耐え得るのは、まさにスターの力だと実感した。
宇宙空間が舞台なので基本的には登場人物の聞こえる音しか劇中では再現されていない。そのような致命的なハンディを絶妙のタイミングでカバーする劇伴も、この大傑作の立役者だ。
そして驚くべきことに上映時間が91分!絞られた登場人物と絞られたストーリー展開、極限まで削ぎ落とされた映画の結末に映るのは、人と人とを繋ぐ絆だ。こんなにも人が人を求める姿を解り易く、そして切実に描かれた映画はあっただろうか。
アルフォンソ・キュアロン監督はビッグバジェットの映画を巧みにハンドリングし、まさに地に足の着いた映画に仕立て上げた。新世紀の傑作として未来永劫語り継がれる傑作だろう!
TakashiIbayashi

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