紫音

化身の紫音のネタバレレビュー・内容・結末

化身(1986年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

バツイチ不良中年の文芸評論家が、田舎から出てきたばかりのおぼこい銀座の新人ホステスを見初め、容姿も内面も肉体も自分好みに変えていくという、バブル期日本版『マイ・フェア・レディ』。

なんてったって渡辺淳一ですから。
言わずもがな、劇中には男の浪漫という名の濃密で激しい濡れ場が満載。
宝塚を退団して間もない、まだ少女のあどけなさすら残る頃の黒木瞳が大胆に脱ぎまくり、その相手をするのが当時40代半ばのセクシーイケオジ藤竜也。
しかもそれらがバブル時代の東京で繰り広げられるんですから。
その上主題歌が高橋真梨子ですから。
そりゃーもーエロいのなんのって。

しかしこの映画、ただエロいだけじゃない。
終わり方が実に皮肉で良い。

黒木瞳がみるみる自分好みの女に変化していくことで優越感に浸っていた藤竜也だが、始めは従っていただけの黒木瞳が次第に自我を持ち始める。
藤竜也がいい女にしてくれたおかげで藤竜也以外の男も言い寄ってくるようになり、「私、もっとイケる!」と自らの果てしない可能性に気付く黒木瞳。
急に代官山にブティックを出したいと言い出してその資金を藤竜也に都合させたり、その店の商品仕入れ先のニューヨークで若い男と浮気してみたり、終いには藤竜也の二股相手の阿木燿子とめっちゃ仲良くなったりして、突然のやりたい放題で藤竜也を唖然呆然愕然とさせる。
そうして黒木瞳は藤竜也好みの女の最終形態となったところで藤竜也に別れを告げ、涼しい顔で去っていく。
思わぬ倍返し特大ブーメランを喰らって意気消沈、未練タラタラの藤竜也を尻目に圧勝の黒木瞳。
ネオン華やぐ銀座の街で、一人タクシーを拾う藤竜也の侘しい姿を最後に映画は終わる。

しょーもない男の浪漫譚かと思いきや、案外女が観て愉快痛快スッキリな気分になれる作品だったりするのだ。

そしてやはりなんといってもこのどうしようもない昭和の終盤感が堪らん。
紫音

紫音