ポルトガルの映画運動ノヴォ・シネマで有名なモンテイロ監督の作品を初めて見た。アテネフランセは激混みで、2時間前に並び始めてようやく良い席が確保できた。
本作は監督自らがデウスという主人公を演じる、デウス三部作の一作目。おじさんが主人公の不思議なコメディ映画だ。
主人公デウスはある下宿に住んでいる中年のおじさんだ。デウスは同じ下宿に住む女性がシャワーから出ると、その残り湯を飲むなど、欲望のまま行動をしてしまうキャラクターで、これが物語の原動力になっている。
同じ下宿に娼婦がおり、仲良くなったかと思いきや、ある日自殺してしまう。デウスは彼女の部屋のへそくりを漁る。その後、警察の音楽隊に勤める宿の主人の娘に、それを元手にした音楽留学をダシに求婚するが失敗し、強姦する。
逃げ出した後、母が死に、落ちぶれてしまう。浮浪者に間違えられたことをきっかけに、軍人の格好をして警察に侵入し(シュトロハイムのコスプレらしい)、精神病院に送られてしまう。同じ病棟の患者に助けられ、街に戻るが、ノスフェラトゥのように煙が立つ地下から這い上がる。
上映後のトークで塩田監督がガールオアマネーの映画だと分析されていたが、まさに、おじさんが女性とお金に翻弄される映画だった。
チャップリンやジャック・タチのようなサイレント映画を彷彿とさせるが、少し下品なほど欲望のまま行動するデウスは、ある意味純粋だけど、少し嫌悪感も感じるなんとも不思議なキャラクターだった。