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ハンナ・アーレントのkayupanのレビュー・感想・評価

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
4.0
ハンナアーレント『エルサレムのアイヒマン』が書かれるまでの経緯と、書かれた後の批判騒動が描かれている。ユダヤ人で抑留された経験を持つアーレントが、ナチの大虐殺を遂行したアイヒマンの裁判の傍聴と報告書の記述を申し出る。一般的に想定される利己的な悪に対して、アイヒマンの、事務的に遂行するために思考を失う凡庸な悪。全体主義の根源的悪、責任の所在、愚かさへの倫理・通念的な誤解による批判が、アーレントの指摘とは裏腹に理解されず押し寄せる。逆風に対するアーレントの哲学者としての信念が、中心主張とともにエモーショナルに映し出される。"危機的状況においても考え抜くことで、破滅に至らぬよう、善悪美醜を見分ける能力をつけ、考えることで人間が強くなること"
回想的に、若き日のアーレントとハイデガーの出会い、ナチとハイデガーの関係にも触れられる。
アメリカが舞台のため英語主体だが、ハイデガーに師事した友人達とのドイツ語での会話などリアリティに配慮されていて良い。
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