ヒロ

赫い髪の女のヒロのレビュー・感想・評価

赫い髪の女(1979年製作の映画)
3.9
“女の髪は緋色でも金髪でもなかった。その髪は色艶が悪く髪そのものが人工のものに見えた。その赤みがかった黄色の髪は肌理の荒い女によく似合った。”
まさにそんな赫い髪の女を演じた宮下順子はどハマりで、素性の知れない色情狂、赫い神の女になりきっていた。どこか現実離れしたまるで現世のものとは思えない、だが石橋蓮司と彼女にとっては性だけが唯一の共通点であり、その身体を貪るように求め合うなかで徐々に徐々に内面までをもシンクロさせていく。この何でもない抱いてやっているつもりでいた女を他の男に奪られたときに、自らの中で沸々と湧き上がってくる嫉妬こそが愛なんだと理解できていない感じがたまらなく愛おしい。ダンプカーを三輪車に乗り換え、好きでもない女に性処理してもらい、もぬけの殻となったアパートで女の陰毛を拾い、女の残していった口紅を股間に塗る、これ以上ない情けない描写がものすごく愛おしい。雨と汗と性液が雁字搦めに絡み付きムンムンと匂い立つ粘着質で閉塞的な中上健次の文章を見事に映像化した一本。

2020-12
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