Jeffrey

赫い髪の女のJeffreyのレビュー・感想・評価

赫い髪の女(1979年製作の映画)
3.8
「赫い髪の女」

冒頭、真昼のトンネル内を歩く赫髪の女。土方の仕事、回し、強姦、トラック、雨、男と女、血、妊娠、シャブ、針の跡、喧嘩、性の爆発。今、愛欲のうねりの中で愛し合う二人が映される…本作は神代辰巳がATGで撮りながら、成人映画日活ロマンポルノとして劇場公開された傑作で、遂にハピネットから国内初BD化され購入して久々に鑑賞したが素晴らしい。原作は芥川賞を受賞した作家の中上健次の小説"赫髪"を元に作品で、一般的にはロマンポルノの映画の中でも傑作とされている。自分もそう感じる本作…冒頭から堪らないんだよ。後程話すが。

この映画はただのロマンポルノとして見くびってもらっちゃっ困る。なんといったってロマンポルノを超えた傑作としてブルーリボン賞作品賞並びに監督賞、キネマ旬報ベスト点四位、映画芸術ベストテンニ位など多くの賞を受賞した傑作中の傑作である。これは多くの人にぜひとも見て欲しい官能ドラマだ。そもそも性のつながりで生きる様を見事な演出で映画と言う宇宙空間に放りだした神代は尊敬に値する。



さて、物語はダンプカーを運転する男に拾われた一人の赫い髪をした女がひょんな事からその男のアパートに居座ることになる。そして毎晩のようにセックスをし、乱暴に扱われ快楽を味わっていく。そんな中、男の土木作業員の相方に女を回せと言って夜な夜な回してしまう。女は泣きながら叫ぶ。そして複数の登場人物によりドラマが巻き起こる…。

本作は冒頭から非常に魅力的である。トンネルから赫い髪をした女が一人歩いてくる。そこでブルースの音楽が流れ、田舎町の風景が写し出されていく。女の隣ではトラックが何台も道を行く。そして女はまっすぐ歩いて行く。続いて、土方作業している男たちを捉える。一人の女性が男二人に強姦される。女は洋服を引きちぎられておっぱいが丸見えになる。そして了承を得たのか、一人の男とその女がその場で性行為をする(この時、海岸沿いの波の音が聞こえる)。女は痛いと叫びながら性行為の続きをする。

続いて、先程の男たちがトラックに乗り、雨が降ってきた中びしょ濡れになっている冒頭に歩いていた赫髪の女をトラックに乗せる(この時音楽が流れる)。だが、女は急に車から降ろしてくれと騒ぎ始める。そして女は生理のため一旦車から出る。そして次のカットでは豪雨の中、夜になっている。そして男の家に居座り始めるその女、そして男と寝る。

続いて、アパートの下の階の住人の麻薬でラリってる呻き声に驚き目を覚ます女、2人はセックスをし始める。そして接吻、体を抱きしめて濡れながら喘ぎ声を出す女、男は満足のご様子だ。カットは変わり、土木関係の会社の男たちのいざこざを映す。そこに1人の若い女性が現れる。そして男にひっぱたかれ、傘をさしながら雨の中外を歩く。そしてカフェでお茶をしている光造とその相方にその女はお願いをする。

続いて、光造の帰りを待っていた赤髪の女は光造に抱きつき、性行為を求める。そして2人は小さなボロアパートの居間でセックスを行う。そして足をちゃんと担いで欲しいと女は男に望みを伝え乱暴にセックスが始まる…と簡単にオープニングを話すとこんな感じで、長い板橋を傘をさして歩く2人のロングショットのアートフィルムに似たような美しく芸術性の高いシークエンスは圧倒的に好きな場面だ。



いゃ〜久々に見たけど憂歌団のブルースがやはり印象的だ。なんとも素晴らしい音楽だ。それにオリジナルネガフィルムからのテレシネ、オーサリングによるHDリマスター版は流石の美しい映像美だ。それよりもタイトルロゴが出現する冒頭のシーンのかっこよさ、これわかってくれる人居るかな。主人公の演じる宮下順子のクローズアップからトラックが走り去ってゆく瞬間に風に髪が靡いて静止画になって"赫い髪の女"と出てくるシーンは最高である。

赫い髪の女と言うタイトルだけに赤を基調にしたファッションや赫髪のショットの多さなどが際立つ。それに方言指導した人の完璧なまでの方言の伝授の仕方とそれを覚える役者達にも拍手を送りたい。石橋蓮司はこういった役をやらせるとピカイチだ。てゆうか、風呂場にゴムボートみたいなのを作って泡だらけになって2人で阿波踊りしようって言って風呂場の中でセックスする男女の描写が強烈すぎる。

女を回してくれないと言うことで土木現場で取っ組み合いの相方との喧嘩も迫力がある。そんでその流れで相方に女を回すシークエンスで、電気を暗くして女に布をかぶせて徐々に相方にすり替える手法で騙して強姦する場面の酷さはえげつないし、光造が雨の路上で一人で勝手にシコってるシュールの場面も凄いし、立ち寄ったスナックのバーのような所でそのママに手淫してもらい、本格的に性行為をする下りもインパクトがある。

その場面を長回しするのだから…凄いとしか。

足の指が反り返る位にええ気持ち良かったんやでって言う台詞がすごく印象的で、その流れでクライマックスに行くのだが、部屋の中に雨が降りはじめ完璧に濡れあって2人が大団円的にセックス行為をする圧倒的なブルースの音楽との濡れ場シーンのラストは余韻に残る。
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