ずどこんちょ

あの頃、君を追いかけたのずどこんちょのレビュー・感想・評価

あの頃、君を追いかけた(2011年製作の映画)
3.7
台湾の恋愛映画なんて初めて見ましたけど、見事に心を揺さぶられました。
青春の淡い恋心が甦えるようです。

とは言え、下ネタ多め。全編から溢れ出るちょっと前のクドカンのような世界観です。
まぁ主人公コートンを含めて男子チームが良い意味で突き抜けてバカすぎるせいでしょう。男子高校生の幼稚さが存分に発揮されています。授業中に股間を出すとか倫理が崩壊しとんのか……
だけど、そのおバカ過ぎる幼稚さが優等生のチアイーの母性をくすぐったのでしょう。コートンまじでイケメンだったしな。

片想いの恋心は成就しないから美しいとはよく言います。二人は高校卒業後すでに確実にあと一歩を踏み出すことで結ばれる状態でした。
だけど、二人はその一歩をあの時躊躇っていました。どちらかが想いに応えたら、美しい恋心が消えるような気がしていたから。あるいは、答えを出すことで何かが成就しつつも、「君を追っている」という時間に区切りがついてしまう、そんな不安を感じていたからでしょうか。
切ないけど、多くの人が不思議と体感的に共感してしまうのは、やはりそういう思いを経験したことのある人が多いからでしょう。
きっと美しい青春の思い出を胸に秘めたまま、大人になって今を生きているのです。

本作は監督であるギデンズ・コーの自伝的小説が原作だそうで。多くの人の共感を呼び寄せたあの頃の青春と淡い恋心を文章と映像で再現した才能は立派です。
大抵の人が心に留めるイメージを再現できないでいるのに、それを呼び起こしたのですから。

コートンは大学時代に3つの痛みをほぼ同時期に体感します。
格闘技戦で敗北したケガの痛み。これは痛かったけど対戦相手と仲良くなって、むしろ達成感の方が大きかったはずです。次にチアイーに軽蔑され、別れた時の痛み。この痛みは心の奥深くにグサリと刺さってしまいました。そして最後にチアイーが別の男に取られ、それを知った熱血漢な友人に殴られた痛み。
格闘技戦と同じく男同士の喧嘩ですが、友人に殴られた痛みはコートンが自身の過ちに気付くきっかけになったはずです。
この喧嘩が逆光でよく見えない演出も良かったです。

友情、遊び、勉強、大人への反抗、そして恋。
フルスイングで青春をして、ケンカの痛みも恋の痛みも知ったコートン。大人になったコートンは昔と変わらず幼稚でしたが、その顔は昔みたいな阿呆ヅラとはまるで違います。
たった一人の女の子を追いかけ続けて愛してきた自信に満ちており、確信を持って幼稚な自分を貫いている。そんな精悍な顔つきをしていました。