nicol96

トランス・ワールドのnicol96のレビュー・感想・評価

トランス・ワールド(2011年製作の映画)
4.1
びっくり界王星わくわく探検アドベンチャーの皮を被った全然へっちゃらじゃないコスパ最強SFスリラー。

映画のパッケージを見た時点で我々観る側は明らかに何かがおかしい世界観を察しているのだけど、その強すぎる界王星インパクトゆえに、砂漠でもジャングルでも雪山山中でもない場所で健康体の成人たちが「遭難」している事をすんなり受け入れてしまった。
「木を隠すなら森」は「異質さ」という概念にも当てはまるものか。

それに対して中盤から後半にかけて畳み掛ける明らかな異変や怪異が段々と線に繋がっていき、序盤に隠れていた微かな違和感たちが鮮やかに回収されていく様は無茶苦茶にカタルシスみあって素晴らしい。

戦争、クラシックカー、"phone"、ビンテージワイン、パックマンなどなど。
あるモノや概念を指す言葉は同一でも、ソレの認識が人によってズレてることはこの日常にも潜んでて、僕らは個々の乖離に気づかなかったり、見えてないふりをしてたりしている。
そのことは時には上手く働くし、またある時には意図せず真実を遠ざけている。これは良い悪いの話ではないけど、ただ僕らが一般論としての「認識ズレ」自体を気づかない・見えてないふりをすることはとても愚かしいと思う。

邦題『トランス・ワールド』は割と言い得て妙で、なんとなしにサマータイムレンダとかレベルE(野球部地区予選の回)を思い出させる良作でした。

ちなみに作中で一瞬ワードが出てくる「Kマート」はアメリカに実在する小売店で、Wikipediaによればその名を冠するのは1962年から。低予算だからこそ制作陣の芸の細かさが光るね。
非ネイティブには辛いとこだけど、アクセントや言葉遣いなんかにもそういうエッセンスが色々ありそう。
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