幽斎

ロフト.の幽斎のレビュー・感想・評価

ロフト.(2008年製作の映画)
4.6
ベルギーのミステリーと言えば、「メグレ警視」のGeorges Simenonが有名で、日本の「名探偵コナン」に多大な影響を与えた作品として知られてます。ドラマ版は、あのRowan Atkinsonが渋く熱演してます。その評判の良さから2010年にオランダ本国で「LOFT 完全なる嘘」(ラストが若干違う)でリメイク。そして2014年「パーフェクト・ルーム」でハリウッド・リメイクされる、此方は既にレビュー済ですが、3作品の中では、やはりオリジナルの本作が1番出来が良いです。

イントロダクションを見て思い出すのが、奇しくも同じ2009年に六本木ヒルズのマンションで起きた、ホステスの女性が全裸で死亡していた俗に言う「押尾学事件」です。本作をご覧頂ければ実に設定が似通っており、この手の話は古今東西変わらないのだと、やるせなさが甦ります。

本作の特長は名探偵や名刑事が登場する訳では無く、胡散臭さ満点の5人の当事者だけで推理と捜査が回想も交えて行われ、真実に至る過程が実に秀逸に描かれてる。特にトリックについては、全て映像で表現されており、与えられた材料のみで衝撃の事実へ辿り着けるよう、とてもフェアに作られてる。(ヒントです)特に犯行現場については、それ自体がトリックのキーワードに為っており、これを見誤ると大事な伏線を見逃して混乱する仕掛けが散りばめられてる。更に5人の容疑者が絶対バレては困る奥さん達の演技が謎に拍車を掛け、身に覚えの有る殿方を大いに震え上がらせる効果も有る(笑)。

もう一つ見逃せなのが全編を漂うスタイリッシュな雰囲気。建物、家具、登場人物の着こなし、なんなら警察に至るまで実にオシャレに仕上がってる。ハイソサエティーなムードとは裏腹にやってる事は人の道に外れてる、このアンバランスさが魅力ですが、特に既婚者の女性の方には到底容認できない設定なので、感情移入と言う点では確実にマイナス、この作品は登場人物と同じ様に殿方が1人で、こっそり観るのが正しい鑑賞方法かもしれません(笑)。

「ベルギーで10人に1人が見た」の看板に偽りなしの本格ミステリー。肝心の動機がチョッと弱いのが難点ですが、各国でリメイクされるのも納得の完成度。この作品の邦題は「ロフト.」(原題LOFT)最後のピリオドが何を意味するのか、観て頂ければ分ると思います。推理小説ファン一押しの作品です。
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