まぬままおま

そして光ありきのまぬままおまのレビュー・感想・評価

そして光ありき(1989年製作の映画)
5.0
オタール・イオセリアーニ監督作品。

ポストコロニアル映画の大傑作だ!!!凄い!!!

まずアフリカのどこかの部族のドキュメンタリーだと観客は思うのだが、呪術によって首はつながるし、人物が息を吹くと砂塵が舞い上がる。それらから本作は明らかに作劇がされているのが分かるが、その作為のなさよ!!!本当にどうやって演出して、撮影しているのか全く分からない。素晴らしい。

しかも本作は部族の暮らしや男女の裸体をオリエンタリズムな眼差しで素朴に美しく表象しているわけではない。彼らの暮らしは、周辺の文明化された街やそこで暮らし衣服を身につけ、木を伐採にしてくるアフリカの人々とも関わらざるを得ない。さらにそのアフリカの人々にトラックを与え「資本家」であるヨーロッパ人とも。このようにヨーロッパーアフリカといった素朴な二項対立であったコロニアル時代から、アフリカでも差異が生じているポストコロニアルな時代を的確に描写している。しかもそれを大文字の政治的な物語ではなく、二人の女が男を取り合ったり、夫が妻を街から連れ戻す恋愛や生活のドラマでみせるのである。

もう夫が街に進むにつれ、ズボンを履き、帽子を被り、衣服を身につけ、法的な身分を与えられる過程をみるだけで面白いし、示唆的だ。彼らの生活も家が焼かれ、移動せざるを得ないように安定されたものではないし、文明化の波は押し寄せている。共存すべきと言うのは簡単だが、行うのは難しい。ただ本作をまずみよ。話はそれからだ。