このレビューはネタバレを含みます
オタール・イオセリアーニ監督特集にて。
イオセリアーニがフランスで撮った長編第1作。
現代のフランスで暮らす様々な住民(パリの女画廊主と愛人の技師、銃砲店主、美容師、警視、空き巣の父子、過激派の音楽教師、娼婦、暗殺者のアラブ人、ホームレスなど)18世紀の絵皿と裸体画をめぐり交わる行動を俯瞰的な眼差しと、シニカルなユーモアを交えて描く群像劇。
骨董品が製作された過去に遡ったエピソードが唐突に18世紀のモノクロシーンで挿入されたり、人間関係も錯綜して分かり辛かった。しかし、小オムニバスのように台詞を抑制した断片的なシークエンスが、「割れる皿」と「盗まれる絵画」シーンの運動の反復によって連なり、上流階級の家族と裏社会で生きる人々とを並列して、地続きに描いていく。
フランスで撮られているためか、ロメールやリヴェットなどヌーヴェル・ヴァーグ作家に通ずるフランスの街の撮り方、アバンギャルドなゴダール味も感じたりしたが、もっと呑気でシニカルな暴力性が同居している。
空き巣の息子役として出演している、初々しいマチュー・アマルリックのデビュー作。
2023/03/06 名古屋シネマテーク