半兵衛

月の寵児たちの半兵衛のレビュー・感想・評価

月の寵児たち(1985年製作の映画)
3.0
冒頭の皿が割れて新しい皿が作られる様子を通して破壊や人の死から新たな人間や物が製作されループするように日常が続いていくことを示唆していく演出が見事。ただ全体的に日常での人の営みと主人公たちテロリストや犯罪グループの活動が緩慢な語り口で展開していくので段々と飽きてくることに、テロリストを何の変哲もない石像を破壊したりとあくまで抽象的に描くことで見る人に親しみをもてやすくする演出は上手いと思うけれど。それに登場人物の関係が結構ギスギスしているので少し居心地が悪かったりも。

あと皿が割れるくだりやたびたび語られる「人間と猟の関係性」はテロと人間という本作の重要なテーマとして作品で機能しているけれど、あまりにも引用され過ぎていて辟易してしまったのも事実。

暴力の連鎖が起こるも日常はつつがなく進行していくラストは良かったけれどね、でも作品にそれまで登場していなかった古い場所で唐突に話を終わらせるのが古きものを大事にするイオセリアーニ監督らしい。

テロリストたちと親しい娼婦たちの暮らしぶりやダメンズすぎて憧れないテロリスト、そしてラブドールかと一瞬勘違いした下品な収納棚も見所。
半兵衛

半兵衛