けまろう

昼顔のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

昼顔(1967年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『昼顔』鑑賞。ブニュエルの作品は『アンダルシアの犬』しか観たことがなかったが、あれは実験的手法を用いているが故に彼の代表作であり、この『昼顔』と比較するのは実にナンセンス。とは思いつつも、シュールな表現を探しながら観てしまう。
医者のピエールを夫に待つ裕福な夫人セヴリーヌが、刺激を求めて娼館で働き始めるという話。そこで友人に出くわしたり、しつこい客マルセルにつきまとわれたり、客人の変態プレイにうんざりしたりと、現代の日本にも通じるような物語だ。
冒頭の長回しのシーン。これはセヴリーヌの夢であるが、馬車に乗った夫にセヴリーヌは「君は不感症であることを除けば完璧だ」と言われる。そして、性的快楽に目覚めさせようとするピエール、これは性欲を持たなければという貞淑なセヴリーヌ自身への強迫観念であろう。その結果、セヴリーヌは娼婦として働き始めるが、実際にピエールは性欲を積極的には求めなかった。不特定多数の男を抱くと、夢の中では逆に性欲を責めるピエールの姿が。これはセヴリーヌ自身の自責の念に他ならない。セヴリーヌは娼婦であることに罪悪感を覚えていく。そんなセヴリーヌに骨抜きとなっていたのが、ゴロツキの青年マルセル。
性欲に愛を見出したマルセルと愛に快楽を求めないピエールは対比的に描写され、最終的にマルセルは死を迎え、ピエールは半身不随のようになりながらも一命を取り留める結末へと向かう。しかし、セヴリーヌの真実を友人から聞いたピエールは(恐らくあの力なく垂れた手のカットから判ずるに)絶命。ラストは誰も乗っていない馬車が駆け抜けるシーンで終わる。性欲を暗に求める夫はもう存在せず、セヴリーヌは性欲から解放されるのだ。流石の名作。
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