三樹夫

昼顔の三樹夫のレビュー・感想・評価

昼顔(1967年製作の映画)
3.9
バーホーベンの新作『エル』はこの昼顔を目指したとのことなので、予習しとこうかなと思って観賞。上品で清潔な人妻が旦那が仕事に出ている昼、2時から5時まで秘密クラブで昼顔という源氏名で娼婦として働くという、何の妄想!?というような映画なのだが、実際観てみると下卑た感じとかは無くて、むしろ洗練されてるし出てくる女性全員美人でオシャレ(衣装がとにかく良い)という、おフランスの上品な香りが漂ってくるような訳の分からない映画。何故訳が分からないのかというと、どこまでが現実でどこまでが夢やら妄想やら分からなくさせる作りとなっているからである。
冒頭から主人公が背中ひん剥かれムチで打たれるという、乱歩先生が喜びそうなスタートを切る。これは夢なのだが、どうやら主人公は不感症でマゾッホ的嗜好の持ち主ということが分かり、しかし一方で下品な人間が嫌いで、最初秘密クラブのことを聞いた時も不潔だわという態度。だが、興味を惹かれ結局秘密クラブで働くこととなる。この秘密クラブの客というのが変態のオンパレード。まずサクランボのブランデーが金玉、ガハハおやじのシャンパンを開けるのは男の役目とか言ってシャンパン開けてたのが射精のメタファーにしか見えなかった。教授の所は笑いましたよ。シチュエーションプレイしてる最中でも演出してるのはマヌケこの上ないですね。マゾは基本受け身になるから主体的に動きやすいサドよりも自分のやって欲しいように相手を自然にコントロールするのが難しいんだよね。事前に全部口で説明して、さあやってみようっていうのは萎えるし、と圧倒的マジョリティの僕は推論しました。主人公を家に招いた紳士風のオッサンはおそらくネクロフィリアなんだろう。黒のスケスケベールを纏って歩いているシーンは必死こいて目凝らして観ました。

ときどき夢みたいなのが挿入されどこからが現実か夢か曖昧だし、そもそもこの話自体全部主人公の妄想なんじゃないのと、疑問が次から次へと湧いてきて観ていて思考回路はショート寸前になるんですが、後考えるのは、現実にしろ妄想にしろ何故主人公はこんな行動をとるのか(こんな妄想をするのか)ということ。女性の欲求不満について描かれている映画なのか、それとも旦那は人が良さそうだが、優しいというだけでは魅力にかけるということなのか、または過去の回想から、性的虐待があってそれで信仰心から自分を過度に抑え込んでいるがゆえにという、宗教的な要素があるのかなとか、まあ色々です。でも、この映画答えを提示する映画じゃないですからね。個人的には全部妄想だと思いました。
三樹夫

三樹夫