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昼顔のpikaのレビュー・感想・評価

昼顔(1967年製作の映画)
5.0
なんだこれ!ラストで発狂した。
なんつーFIN、そして何秒もジリジリとブラックアウトしない妙な間!
他所に逸れず一人の人物に延々とフォーカスを当て、その人物だけの内面や外面を映し出しながらも徹底的に感情表現や台詞を排し、変化してんのかしてないんか微妙な表情の奥を観客に覗かせようと前のめりにさせ、突然画面が過去や妄想、夢などに誘導なく切り替わる、極上の面白さ。
単なるドラマに落ち着かず、説教くさくもなく、人間だもの感も押し付けず、主人公の行動理論を心理学めいた表現でぶち込んで悶々と探索させてしまう、そんなブニュエルのアッパレな演出手腕に腰が抜けた。


気品と美とフェロモンを完璧に融合させたカトリーヌ・ドヌーヴの存在感は映画史に残るだけの圧巻さであり、映画を全て食ってしまって彼女の存在だけが印象に残るような強烈さはあるが、全てはブニュエルの手のひらで転がされているだけのことよと言わんばかりに、如何様にもドロドロにできそうな下卑た要素を淡々と軽やかに、それでいて意味深で、ファッション誌のような上品さで覆われた画面から滲み出るブニュエルの個性、味わい、魅力が迸りまくって極上の面白さに昇華されている。

ただ今作はジャン・ソレル演じる旦那のキャラクターが最も重要かつ中心であって、イケメンで誠実で真面目で優しく裕福な完璧過ぎる夫である、それなのに物足りない、いやだからこそ物足りない、完璧を求めても満たされることはないという人間の強欲を引き出す強烈なキャラクターが凄い!!!
カトリーヌ・ドヌーヴ自体も完璧な妻であるが、その完璧さから貞淑を抜いたときみるみる人間らしく生き生きとする様は単に性の充足という意味ではなく、精神的な意味での人間の業であると痛いほど感じる。
考えれば考えるほど深い。めっちゃくちゃ面白い!何度も見よう、大傑作!
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